ベトナムに貿易赤字拡大懸念 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 昨年12月、ベトナムの輸入は急増しました。当然、それに伴って貿易赤字も急拡大しています。ベトナム統計局(GSO)によると、12月の輸入額は74億ドル(速報値)で、これは2009年の月間最大額となります。

 昨年12月に特に輸入が増加したのは完成自動車(CBU)や携帯電話・化粧品などの高級消費財です。輸入急増から12月の貿易赤字(速報値)は27.2億ドルとなっています。

 結局、2009年通年の貿易赤字は122億ドルで、同輸出額566億ドルの21.6%になりました。ベトナム政府は完成自動車(CBU)や携帯電話・化粧品などの高級品・贅沢品の輸入増を貴重な外貨を流出させる無駄なものととらえており、今後なんらかの規制がなされる可能性が十分あります。こうした考え方は「お金=労働」のマルクス主義の原則からは当然なのですが、現在の資本主義経済にはあまりマッチしません。むしろ、世界はベトナムの保護主義化と捉えるリスクがあります。

 貿易赤字の拡大を受けて、グエン・タン・ズン首相は年初早々(1月5日)に関係各省庁・大臣に対して、「2010年の貿易赤字を輸出額の20%以下に抑えて欲しい」との指示を出しています。

 産業貿易省(MoIT)では第1四半期の輸出促進のための計画書、第2四半期の貿易赤字縮小のための政策案を政府に早々に提出する予定。また、財務省では付加価値税(VAT)の見直し、通関期間の短縮、輸出保険についてのプロジェクトなどを実施します。

 ベトナム外務省では2010年通年の輸出額を前年比6%増の600億ドル程度と予想しています。したがって、産業貿易省を中心に各省は通年貿易赤字額を輸出予想額の20%にあたる120億ドル以下に抑えるために全力を尽くす方針です。産業貿易大臣は、「グローバル金融危機が一段落し、カシューナッツ・胡椒・水産物・靴・衣服品などの輸出増大を期待している」と述べています。

 輸出促進は良しとしても、輸入規制は国際的な保護主義化・ブロック化につながりかねないため細心の対応が期待されます。