ベトナム株式への通貨ドン安の影響 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

「年末の特殊な資金需要(借入金返済、ボーナス支給など)」と「年間融資伸び率目標30%」を達成したために当局が市中の各銀行に「融資抑制」を指導しているため、ベトナムの短期金利は上昇しています。したがって、現在、貿易赤字増大で懸念されたていた通貨ドン安も短期金利高から小康状態といったところです。

 米国はサブプライムで躓いた大企業に公的資金を注入しながら財政赤字を膨らませ、現在(9月末)の財政赤字は1兆4,000億ドルに達しています。これは、去年の3倍以上の数字です。

 一方、ベトナムでは今年4月から貿易赤字が継続中で、多くのエコノミストは通貨ドンは「弱いドル」よりも「更に弱い通貨」と認識しています。

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 サコムバンク(STB)の店頭で撮影。STBはベトナム商業銀行最大手の一つで金融グループ・サコムバンクグループを形成している。
 STBは一年前にビエンチャン(ラオス)に支店開設、開設1年後の先週にはビエンチャン支店は総工費推定1000万ドル地下一階3階建て(9万2千平米)の新自社ビルに移転した。サコムバンク・ビエンチャン支店は昨年12月12日の開設以来今年11月末までで1000万ドルの預金を獲得、融資残高は既に500万ドル近くに達している。更に、今年6月には同じく資金需要の旺盛なプノンペン(カンボジア)にも支店を開設した。また、中国にも駐在員事務所を置いている。サコムバンクは近い将来のシンガポール市場上場を計画している。顧客ターゲットには、当該国の企業・個人だけではなく越橋やサコムバンクグループ内企業を含むベトナム企業などだ。

 ベトナム国家銀行は先月25日に通貨ドンをドルに対して5.4%切り下げました。仮に「今後、通貨ドンが更に減価するとなると株式市場にどのような影響がでるか」を予想してみました。

 通貨ドン安は「輸出企業」にとっては朗報です。なぜなら自国通貨安は輸出競争力を高めるからです。特に、エビや魚などの養殖水産物輸出業者、ゴム輸出業者、農業などの一次産品輸出企業には通貨ドン安はメリットを与えます。ドルに対する信任が揺らぎ世界的なインフレ懸念のなかゴム輸出企業などの一次産品輸出企業は、将来のドン安を考慮しても魅力的な銘柄かもしれません。

 一方、直接的に通貨ドン安の悪影響を受けるのは多額の外貨建て借り入れをしている企業です。例えば、ペトロベトナム・ドリリング(PVD)の今年末時点でのドル建て借入金は2億3000万ドルに達する見込みです。その他にも、ファーライ火力発電(PPC)、ペトロベトナム運輸(PVT)、ビナシン投資石油運輸(VSP)、第一ハティエンセメント(HT1)などが多額の外貨建て借入金のある企業とされます。こうした企業への投資は慎重に様子をみて行う方が良いと思われます。

 更に、最近発令された財務省法令では、こうした外国為替損失は5年間の開示猶予を与えられることになりました。ベトナムにも「臭いものには蓋」というカルチャーがあるようで、不透明感が増しているので注意が必要です。

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 元気なベトナム。シーゲーム(東南アジア競技会)でのベトナムの勝利を喜ぶベトナム女性たちの写真。今回のシーゲーム優勝(*)の「大騒ぎ」では、日本には無いベトナムの「エネルギー」、「若者の多さ」、「純粋さ」に圧倒されっぱなしだった。
 大小の反落を繰り返しながら、長期的にはベトナム経済は成長していくだろう。少なくとも、「引き算」で考えれば、ベトナム株は日本、米国、欧州、インドの株式市場よりは有望と思われる。

(*)訂正、「優勝」ではなくマレーシアに次いで「第2位」でした。