世界で最も激しい爆撃を受けた国 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 世界で最も激しい爆撃を受けた国はどこでしょうか。ベトナム?イラク?もしかして日本?

 答えはラオスです。

 ベトナム戦争中に米軍はラオスに大規模な空爆を行いました。空爆は1964から1973年まで続き、200万トンの爆弾が落とされたとされています(ベトナムは100万トン)。特に、ベトナム民族統一戦線に協力していたラオス愛国戦線の本拠地「ラオス北部(ビエンチャン北東の山岳地帯)」と「ラオス南東部(ホーチミン・トレール=北ベトナム軍補給路)」は空爆の標的となりました。

 空爆に使われたのは主にクラスター爆弾(テニスボールほどの大きさで、その中に入っている300個の鉄球に殺傷能力がある)。その不発弾はラオスの山岳・ジャングル地帯にはまだまだ多く残っています。そして、ラオス政府によれば今でも貧困層地帯と不発弾地帯の分布には明らかな相関関係があるとのこと。

 日本では「カンボジアの地雷」が有名ですが、「ラオスの不発弾」については知らない方が多いと思います。米軍はベトナム戦争中にラオス北部で未使用だった爆弾を基地へ戻るまでの爆撃機乗員の危険を避けるために途中で無差別にばら撒いていたそうです。現在、中国に対して、常に「人権問題」を指摘する米国ですが・・・同じです・・・。

 地雷は身体の一部(手足など)を奪ってその残酷さで兵士の士気を低下させるものですが、不発弾は爆発力が強いために致死力があります。ラオスの不発弾がそれほど知られていないのは「死人に口なし」ということなのでしょう。

 ラオスは内陸国ですが、地政上、北に中国(雲南省)・東にベトナムという後背地(ヒンターラント)があり、カンボジア・タイ・ミャンマーと国境を接しています。そして、ラオス周辺の港湾、即ち、ミャンマーのモーラミャイン、タイのバンコク、カンボジアのシアヌークビル、ベトナムのホーチミン・ダナン・ハイフォンに連結する要所にあたります。「袋小路の国」でもあり「要所の国」でもあるわけです。しかも、鉱物資源、水資源は豊富。米軍の爆撃を受けるはずですね。

タイ在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ
 ビエンチャン中心部の噴水広場(ナンプー)の写真。旧宗主国フランスの影響が濃い。

 仮に、ラオス・カンボジアが「中華圏」となればベトナムは「中国の囲繞地」となり、インドシナ半島の地図は大きく変化します。「オセロゲーム」で言えば角を取れば、オセロはひっくり返る可能性が高くなるのと一緒。

 現在、ラオスは政治的にはベトナムに顔を向けています(共に中国と戦ったのですから)。しかし、経済進出では中国が優勢です。緩衝国ゆえに、ラオス政治は柔軟。カンボジアの行方にも左右されますし、今後が注目されます。

 (参考)テラ・ルネッサンスのウェブサイト