タイのインフレはひとまずは終息 | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 米国震源のサブプライム金融危機で投機・投資筋が世界中の市場で手仕舞い売り。フライト・トゥー・クオリティー(質への逃避)でマネー(資金)が米国短期金融市場に戻ったため、株式市場だけではなくコモディティ(商品)市場も下落しています。

 その結果、タイのインフレはひとまず終息中。7月の消費者物価指数は前年同月比9.2%アップしていたのが、8月は同6.4%、9月は同6.0%と2ヶ月連続下落。10月CPI(11月初発表予定)も下落となるでしょう。

 現在、タイのガソリン価格は「91(タイ語でガウヌン)」と呼ばれるレギュラーガソリンでみると、1リットル28.59バーツ(為替レート1バーツ=2.81円換算で80.33円)。「91」ガソリンは今年7月には40バーツ近辺にまで上昇していましたから、30%弱の値下がりとなります。急激な「円高」と「バーツ安」の相乗効果で1リットルが80.33円。日本のレギュラーガソリン140円弱を考えると・・とんでもないこと(笑)になっています(日本はガソリン規制が強いという要因もあります)。

 一方、貴金属市場では28日に「ゴールドが投機筋の投売りで価格急落。その結果、タイ・ゴールド取引事業者協会は加盟店に土・日曜日を休業するように指示」というニュースも流れています。つまり、中華街へ行っても「金行」は週末はほぼ閉店しているということです。

 石油もゴールドもドルが機軸通貨のため、一般には「ドル建て価格」で取引されています(実は石油は例外が増えています)。下落(減価)している弱い「バーツ」建てで投資していてもこれだけの影響があるのですから、仮に日本から「円高」の強い「円」建てで投資していたら、さらに(円でみた)値下げ分は大きかったことになります。

 逆に言うと「円高」になるとコモディティ(商品)価格が下がるため、日本国民はインフレの影響を受けにくくなるというメリットがあります。

 通常「円高」になると、テレビ局は毎度、中小企業・製造業・熟練工などをインタービューし「円高デメリット」による経営圧迫を強調します。一方で「円高」で儲かる企業は口をつむります。下手に「儲かってます」とでも言おうものなら、社会の嫉妬の権化(?)税務署が黙っていないですから。日本にはそういう部分が根強いと思います。

 ここで利益(人数?)考量したいと思います。「円高」は海外から安くガソリン、穀物などの物品を輸入できる、海外旅行にも安く行けるなど、国民全体が広くメリットを享受できます。逆に「円高デメリット」は、輸出業者の国際競争力が無くなるため、海外進出など企業努力をしなければならなくなります。人数的には、「円高メリット」を受ける人数のほうが間違いなく多いと思います。(付け加えると、農業補助金などにも同じことが言えます。一体、農業従事者は日本の人口の何%を占めるのか)

 タイの話に戻ります。タイ庶民はいま比較的「ハッピー」な状態です。ガソリンは元の値段に戻ったし、ご飯(米)は安い。トウモロコシも大豆も・・・前年比で安くなっています。日本と異なって、タイ庶民にはSET市場の下落はあまり関係ありません。「逆資産効果」は庶民にはないからです。