昨日のブログで、
<「換金売り」による「リパトリエーション」(資金の本国回帰)で世界の株式市場、石油市場、穀物市場、貴金属市場から投機資金が「キャッシュ(現金=つまり米ドル)」に逃避し(向かっ)ている
と書きましたが、今日はリパトリエーションが為替市場などに与える影響について考えて見ます。
まず米ドルですが、米国のヘッジファンドや年金ファンドなどの国際投資資金がリスクを嫌って米国に回帰した結果、米ドルは概して他国通貨に対して高くなっています。例外は奇しくも昨日ブログで通貨統合の「夢(?)」を描いた「日本円」と「人民元」。日本円は円キャリートレード(ヘッジファンドなどが低金利で円資金を借り入れドル転する取引)のリワインド(反対売買)で、最近13年来の高値である1ドル92円台となりました。一方、人民元は現在のところは安定しています。
ユーロを含む他通貨は軒並み米ドルに対して安くなりました。特に「リスクが高い」とされる新興国の通貨は、投資家の選好が低リスクの安全資産・・具体的にはT. Bill(米国短期財務省証券)・・に移ったため、全般に下落しています。例えば、韓国ウォン、シンガポールドル、フィリピンペソなどはここ数年来の安値を記録しています。
米国が景気後退すると、消費が鈍り、輸入が減少します。これにより、米国の貿易赤字が減少します。そして米国の貿易赤字減少は、つまるところ新興国の輸出減少を意味するため、新興国の貿易収支が悪化。これにより新興国の通貨安を招くという、「毎度」の「負の連鎖」が今回も起こっています。
タイ・バーツについてみてみると、貿易黒字の減少、海外資本流入の減少、観光収入の減少のトリプル・デメリットから、今後さらに対ドルでのバーツ安が続く可能性が高いと思います。
実際、今年に入ってから、政治混迷などの要因もあって、外国人投資家はSET市場で株式を1400億バーツ以上の大量の純売り越しをしています。一方、バーツ安のためタイの輸出競争力は強くなりました。特に日本市場、中国市場の消費が「仮に」腰折れしなければ、タイは輸出で競争上は有利な立場に立てます。
本日、ある金融機関の依頼で、タイにおける長期滞在の現状についての原稿を書いたのですが、タイで長期滞在を希望する方々にはバーツ安は「朗報」となります。おそらくここ数年減少傾向だったタイへの日本人長期滞在希望者は、再度増加するのではないでしょうか。