野村HD、三菱UFJ・・・日本から世界中へ資金が逃げている? | ホーチミン市(旧サイゴン)在住・証券アナリストのタイ株、ベトナム株、日本株ブログ

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ホーチミン市(旧サイゴン)在住の証券アナリスト・竹内浩一が、ベトナムを中心に世界の金融市場を見渡すブログです。

 国内証券最大手の野村ホールディングスが23日、経営破綻した米大手証券リーマン・ブラザーズの欧州・中東部門を買収すると発表しました。北米部門を除くリーマン・ブラザーズの海外部門を、あの「ハウス・オブ・ノムラ」が全て押さえることになります。野村側からすれば「棚からぼた餅」という感じでしょうか。

 今回の野村ホールディングスの買収だけでなく、最近の日本企業の海外での買収関連のニュースを列挙してみます。

・1月にみずほコーポレート銀行が米証券大手メリルリンチに約1300億円出資。
・6月に三井住友フィナンシャルグループが英銀大手のバークレイズに約1000億円出資。
・8月には三菱東京UFJ銀行が米有力地銀ユニオン・バンク・オブ・カリフォルニアを35億米ドルでTOB(株式公開買い付け)。
・保険会社では東京海上ホールディングスが7月に米中堅損保フィラデルフィアの買収発表。
・9月、三菱UFJ、米モルガン・スタンレーに出資 最大9000億円

 いずれもサブプライムローンで傷ついた金融機関を日本企業が買い叩く形になっているのが特徴です。

 一方、日本企業ではないですが、インドの大財閥タタグループは高級車ブランド「ジャガー」「ランドローバー」を買収。実は日本のシンジケートローンで800億円ほど調達しています。

 なにが言いたいかというと、1つは「米国金融の凋落」、もう1つはすべて「日本から海外への資金フロー」だということです。「米国金融の凋落」は言い尽くされていると思うので「日本から海外への資金フロー」について触れてみます。

・数字でみると、日本から中国、インド、韓国、シンガポール、UAE、マレーシアの6カ国への年間資金フローは、2005年が250億米ドル、2007年は660億ドルと急増。また、サムライ債(海外企業が日本国内で円建て発行する債券)発行額は今年7月までで200億ドルに上り、昨年比倍増ペースです。

 この理由は何でしょうか? 最大の理由は日本の低金利政策。そして日本企業がサブプライム問題で他の先進国企業よりも傷つかなかったことが挙げられます。つまり、欧州や米国と比べると、日本企業はバランスシートが強いのです。また日本の個人金融資産1500兆円超の一部は、海外債券ファンドなどを通じて海外へ流出しています。つまり現在、日本からの資金は世界の流動性の拠り所になっているのです。

 80年代にジャパン・マネーが世界を席巻しましたが、バブル崩壊で相次いで海外から撤退。90年代には日本の銀行は資金調達をするのに、いわゆる「ジャパンプレミアム」分の20ベーシスポイントを余分に支払っていました。さらに90年代後半から2000年代初めの金融危機では、外資から資本支援を仰ぎましたが、サブプライム問題以降、どうやら立場が逆転したようです。

 現在、日本の銀行は「ジャパンディスカウント」と呼ばれ、10ベーシスポイント割安に資金調達が可能になっています。当面の間、このトレンドは継続するのではないでしょうか。

 しかし、現在と「イケイケ」だった1980年代後半とでは、大きな違いがあります。80年代後半には低金利政策の中、世界中から日本へ資金が集まってきました。それが「円高」を呼び、不胎化した資金は「株高」につながりました。しかし現在は、その逆の状況。日本から世界中へ資金が逃げています。

 最近の日本金利と日経平均株価を比較したグラフをみればわかりますが、金利が上昇すると日経平均株価は上昇する傾向があります。そして金利が低下すると日経平均株価は下落する傾向がみられます。

 毎回引き合いに出して恐縮ですが、先日インタビューしたジムロジャース氏は「将来のいつかかならず、日本のねじれた(Distorted)低金利は修正されることになる」といっていました。そして、日本の低金利が修正されたとき、世界の資金の流れ(フロー)が大きく変化するはずです。