【登場人物】

綾瀬 柚(アヤセ ユズ)18歳♀
隆と同じ歳で妹。元気で明るい。子供っぽい。

綾瀬 隆(アヤセ リク)18歳♂
柚と同じ歳で兄。クールで優しい。面倒見がいい。

綾瀬 佳子(アヤセ ケイコ)♀
二人の母親。シングルマザーになった。

柚:
隆:
母:

♀2 ♂1 計3


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柚N この関係は崩せない。そんなの分かってる。だけど、気持ちはそれの先を行く。心の色は交わることのできない色なのに。次第に濁っていって、透明に透き通った色になることはなかった。

母 柚、隆。忘れ物ないね?

柚 ちゃんと確認したよ!行ってきまーす!

隆 ふぁ...。朝から元気過ぎ。

母 あ、隆待って。後ろの襟。...ん、これでよし。行ってらっしゃい。

隆 ありがとう。行ってきます。

母 ...っと、私も用意して行かなきゃ。おはよう、有司さん。

柚 「無色透明。」



柚 帰りコンビニ寄ってかない?家にアイスなかったでしょ?

隆 いいけど、余計なもん買うなよ。あと、ちゃんと飯食うことな。二人で遅くなるとまた母さん心配するし。

柚 分かってますー。

(間)

柚 ん〜!美味しい!やっぱ夏はスイカバーだね!

隆 やっぱ余計なもん買いやがった。...あ、LINE。今日母さん仕事長引きそうだってさ。

柚 どーして私に連絡ないんだろ。

隆 そりゃ柚が見ないからあてにされてないんだろ。

柚 きたら見るもん。

隆 ほとんどサイレントにしてるから気付かないし、てか音出してても気付かないからな。

柚 む。でもいいもーん。お母さんの連絡は隆がいるから分かるし!ずっと私の連絡係に任命します!

隆 母さん以外の連絡でも、ちゃんと見る癖付けろよ。この先そんなんじゃ困るぞ。

柚 はいはーい。

隆 それにずっとなんか、俺たちにはないから。(小声)

柚 ん?なんか言った?

隆 いや、別に。

柚 怪しい!私の悪口言ったでしょ!馬鹿とか!

隆 そんな小学生レベルの悪口言うかよ。

柚 てことは、私のこと言ったのは認めるん...あ!忘れてた!

隆 なんだよ、買い忘れか?

柚 違うよ!見たかった番組!こんな時間になるって思ってなかったから録画してない!なんでコンビニ行くの止めてくれなかったの!急いで帰るよ!

隆 理不尽。自業自得だろ。...ったく。



隆 柚、食い終わったら食器片せよ。

柚 あと少し待って!今いいとこ!

隆 はぁ...。いいよ、俺がやるから。

(間)

柚 ねー、隆。

隆 ん。

柚 ...今日、また告白されてたでしょ。

隆 またってことはいっつも知ってたのかよ。で、なんで今回だけ言ってきたわけ。

柚 学校で一番可愛い安藤さんって聞いたから、オーケーしたのかなぁって。

隆 ...別に。

柚 教えてくれるぐらい兄妹なんだからいいじゃん!

隆 あのなぁ...。兄妹だからってなんでも話せるわけないだろ。

柚 そんな頑なに言わないってことはオーケーしたんだ。

隆 勝手な解釈するな。

柚 ...。

隆 ...断った。

柚 え?

隆 だから、断った。

柚 そう、なんだ...。良かった。(小声)

隆 ...っ。(柚に近付く)

柚 な、なにー(笑)そんな怒らないでよー(笑)

隆 ...。

柚 隆?

隆 人の気も知らないで。

柚 ...分かってる。

隆 さっきみたいな反応して、何を分かってんの。

柚 分かってる!分かってるから...。

隆 俺も、分かってる。

柚 ...ごめん。

隆 ...ううん。

母 ごめーん!遅くなっちゃ...て。どうしたの?

柚 ...っ。お、お母さんおかえり!

隆 おかえり。

母 二人で、なにしてたの?

柚 なにも...。ね?

隆 うん。

母 部屋に行きなさい。

柚 なんなの...それ。なんで!

母 柚、行きなさい。

柚 一番分かってないのは、お母さんじゃん。

隆 柚、やめろ。

柚 一番分かってないのはお母さんじゃん!一番信じてくれてないのはお母さんじゃん!

母 ...っ。

柚 お母さんが心配するようなことなにもない!なのに、お母さんが信じてないからこんな空気になるんでしょ!毎日毎日、心配ばっかり。でもそれは信用してないから。少しは私たちの気持ち考えてよ!(家を出ていく)

母 柚!...。

隆 柚も必死なんだよ。本当の家族になろうと。

母 分かってるわ、あなたたちのこと。大人の勝手な都合で振り回して気を使わせてしまっていること。信じていないわけじゃない。あなたたちを愛しているから。

隆 うん。

母 血の繋がりなんて関係ない。柚も隆も私の大事な子なの。

隆 母さん。

母 ...?

隆 俺の母親は、母さんだけだから。

母 隆...。

隆 長男だし、家族を守るよ。絶対に。

母 ごめんね。

隆 なんで謝るの。母さんは俺たちの最高の母親だから。

母 ...お父さんと隆と暮らすようになってから、柚は変わったの。

隆 え?

母 あの子にずっと寂しい思いをさせてしまってた。母さんの勝手なわがままで。

隆 ...。

母 母さんも嬉しかったの。新しい世界が広がった気がして。父さんも言ってた。隆には肩身の狭い思いをさせてきてしまって自分が情けないって。

隆 父さんが、そんなこと。

母 だから、柚も隆も幸せになってほしい。けど、母さん逆のことをしていたのかもしれないわね。今のでそれがよく分かったわ。

隆 母さん...。

母 任せるわ。自分のことは自分で決めなさい。それが、自由に思うままにさせてあげることが母さんにできるあなたたちへの償いだわ。

隆 償いじゃないよ。

母 (微笑む)

隆 俺、柚を迎えに行ってくる。

母 ...お願いね。

隆 大丈夫。俺たちは、兄妹だからさ。行ってきます。(走って行く)

母 行ってらっしゃい。...有司さん、これでよかったのよね。私は...母親失格だわ。



隆 柚、帰るぞ。母さんが心配してる。

柚 帰らない。なら隆が傍にいてあげたら?

隆 じゃあ俺もここにいる。

柚 お母さんが心配するじゃん!

隆 なんの心配するわけ。

柚 ...。

隆 母さんがああ言ったのは俺たちのためだって、分かるだろ。

柚 ...うん。

隆 ...俺のこと。男として好きだから、じゃないの。

柚 っ!

隆 自分の本当の気持ち、認めたくないからあんなこと言った。違う?

柚 違わない...。

隆 俺も好き。柚のこと、一人の女の子として。ずっと伝えないつもりだった。けど、前に進むために伝える。聞いて。

柚 ...分かった。

隆 柚や母さんと家族になれて、俺最初不安ばっかだった。女の人のこと信じれなくてさ。父さんをまた恨んだ。

柚 うん。

隆 新しい生活始まっても、なんか乗り気じゃなくて。また別れるのがオチだって思ってた。それを、柚が変えてくれた。

柚 私が?

隆 うん。柚が俺の手を握って、お兄ちゃんって言ってくれたから。それで変わったんだ。

柚 ...隆。

隆 一緒に生活していくなかで俺は兄貴でいる反面、徐々にその感情は兄妹以上になった。元気でなんでも一生懸命でわがままで泣き虫で俺とは真逆の柚に、恋した。でもそれは許されない感情だって、押し殺してきた。

柚 ...。

隆 それが今やっと伝えられた。けど、駄目なんだよ。俺たち...やっぱ兄妹だから。(微笑む)

柚 それでも、私は隆が好きだよ?

隆 ...父さんがいなくなってから俺、孤独だった。それを救ってくれたのは母さんで、どんな形でも母さんは俺に対して愛情をくれることをやめなかった。柚と同じように愛してくれてる。今だって、俺たちのために働いてんだ。柚も分かってるはず。母さんが笑顔になるかは、これからの俺たち次第だってこと。

柚 そう、だね。

隆 母さんさっき言ってた。自由に思うままにさせてあげることが自分の償いだって。どうする?駄目だとか言ったけど、これからのことは柚に任せる。

柚 お母さんはいつだって疲れた顔ひとつしないで私たちのこと一番に考えてくれてた。私も幸せになりたい。だから、決めた。

隆 ちゃんと話そ。その前に謝れな。俺も一緒に謝るから。

柚 隆、ありがとう。大好き。

隆 ...俺も。



柚 ただいま。あの、お母さん。さっきは本当にごめんなさい!ちゃんと話すから。

隆 俺も、ごめん。

母 柚っ隆っ!良かった...!(二人を抱き締める)ごめんね、駄目な母親でごめんね。

柚 お母さん...っ。...ただいまっ。

隆 (微笑む)

母 ...おかえりっ。

柚N 大切なものはすぐに壊れてしまう。けれど、それを直すのもまた大切なもの。その時は気付かないように逃げていても、いつかは気付かなければいけない。濁っていると思っていた心の色は、間違いだったのかもしれない。



(7年後)

隆 綺麗だな、柚。

柚 ふふっ。ありがとう。

隆 やっぱウェディングドレス着たら見違える。

柚 普段が悪いみたいな言い方しないでよ!もう。

隆 悪い悪い(笑)

柚 あれ?そういえば歩美さんと佳司くんは?

隆 俺が怒って佳司が泣いたから、今外であやし中。

柚 隆、もうすっかり父親って感じ!

隆 いや2年前から父親だからな(笑)

柚 ふふっ。ごめんってばー。

母 遅くなっちゃったわー!ごめんね!まぁ柚、凄く綺麗よ。

柚 お母さん!ありがとう。

母 幸せになりなさいね。

柚 当たり前!お母さんみたいな素敵なお母さんになるよ。

母 ありがとうね。

隆 柚、最後の仕上げみたいだぞ。

柚 じゃあちょっと行ってくるね!後でね!お母さん、お兄ちゃん!

母 えぇ。(微笑む)

隆 あぁ。(微笑む)

柚N 幸せになるのは難しいと、何度も心に言い聞かせていた。変わることは難しいと、何度も心に押し付けた。それはただの言い訳で。既に違うものであり続けていたのかもしれない。交わらず前に進んだ心の色は。...透き通った、無色透明でした。



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end.