初めての方はこちらから

 

 


 夕暮れの中、とぼとぼと歩いているとお腹がぐぅとなった。

 その時に始めて朝から何も食べてないことに気付いた。

 それがなんだかわからないケド、すごい悔しくなって、なんでこんな時にお腹が減るんだろう。

 なんでこんな時でもお腹が減るんだろう。

 って泣きながら歩いた。

 泣きながら、ずっと一人で歩いて帰った。


 とぼとぼ歩いていると、道すがら小さい頃にいつも行った公園があった。


 あぁ、ここで良く縄跳びしてたナァ……

 初めてママに×飛びを見せてもらったのもこ
こだったっけ……


 それからしばらく公園で佇んでいた。


 辺りはすっかり暗くなり、街灯の下で私はただ座っていた。


「ヘイヘーイ!
 お嬢ちゃんお名前なんて言うのー?」

 ……ナンパだ。
 しかも柄の悪いカンジの二人だ……メンドクサイ。
 無視発動。

「あるぇー?
 無視くれちゃってんの?」

「ねぇねぇ、お名前なんて言うのカナァ?」

 近い!
 腰を屈めて顔を近付けてくる! 恐い……!

「いや……もう帰るんで……」
 そう言って立ち上がると
「いや、ちょっと待ってよ」
 と腕を掴まれた。

「あの……ちょっと……止めてください……」

 振り解こうとしても離してくれない。

「いや、なま……」
「キィヤァ――――ッ!!」

 その時
「……ィハちゃーんッ!!」
 と向こうから誰かが走ってきた!

 テムズ……さん……?

「……ァ……ハちゃーん!避けてーッ!」

 テムズさんはそう叫んでものすごい勢いで走ってくる!

「あ! いや!」
 と男が言った途端、

<ドガンッ!>

 凄い衝撃で腕が引き離され、私の腕を掴んだ男が吹っ飛んだ。


 多分、飛び蹴り。

 私は呆然としていると、もう一人の男がナイフを出した!

「イィヤァ――――ッ!」

 その場に屈んでギュッと目をつぶると、ナイフを出した男が

「近付くんじゃねぇ……」
 とか言っている。

 テムズさんと思われる足音が、ザッ、ザッ、と機械のように近付いてくる。

「脅しじゃねぇぞ……正当防衛だ……」

 ナイフの男は自分にそう言い聞かせるように言った。

 テムズさんは黙って近付いてくる。

<ザッ、ザッ、ザッ>

「舐めんなコラァッ!」

 その瞬間、
 顔を上げると、
 左手でナイフの刃を素手で払い、男が体勢を崩したところの肩に握りこぶしを打ち込むテムズさんがいた。


「ウガァッ!!」
「肩甲骨を強打しました。
 しばらく痺れて立てないはずです。
 警察へ連行します」

 男達は二人とも
「うぅ…」
 と唸り声を出してうずくまっている。

「……博士、アイハちゃん、確保しました」

 手を電話の形にして、話してる?

「テ……テムズさん……」

 だめ、足が震えて立てない。

 テムズさんはこっちを振り向くと、
「アイハちゃあぁんッ!」
 と泣き出しながら駆
け寄ってきた。

「デム゛ズざぁん!」

 私も安心して泣き出した。