それから私は毎日早起きをして朝日を浴びる生活を続けた。
そして一ヶ月程経った後だろうか。
あの男性職員からフリースクールの案内書が私宛に届いた。
また胸の奥にツキンと響くものを感じた。
私はヤスダタミコが何を伝えたかったのかが気になり、フリースクールへ足を運ぶことにした。
フリースクールは街中にあった。
緑に囲まれたその建物は学校というより児童館のようだった。
中に入ると、一人の女性職員と目が合い、
「誰かの紹介?」
とにこやかな笑顔で対応してくれた。
私はなんだか場違いなような気がして身体を強張らせてしまった。
初めての場所が、
初めての人が、
怖かった。
「お名前は?」
「……葉内……桔梗……です……」
なんとか声を振り絞るように出すと、その職員の顔がパァッと輝いた。
「葉内桔梗さんね!
安田さんから聞いていますよ。
さぁこちらに」
言われるがまま、ホールのソファを勧められて腰を下ろすと、その職員はこのスクールの案内書を持って来て説明を始めた。
ここはいわゆるNPOというところで運営されており、登録をするだけで自由に何でも学べるところで、
来るのも来ないのも自由だし、人に迷惑を掛けなければ何を学んでも良いとのことで、退職した教師などが何名かボランティアで滞在しているらしかった。
知りたいことを聞いたり、一緒に調べてくれたりしてくれるとのこと。
「……安田さんのことは残念でしたね……
安田さんはあなたのことを熱心に話していました。
きっとここならあなたの力になれるってね。
ただ、ここは学校ではありません。
入学も卒業も資格も何もありません。
でもたくさんの人が出入りしていますから、
きっとあなたのこれからが見付かると思いますよ」
その時の私は、
その女性職員の言葉に何だか怖い感じがしてその日は帰った。