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第六章 《アイハ(16才)》 -旅立ち-

 

 パパが日本へ逃げた。

 逃げたかどうかわからないケド。

 とにかくいなくなってしまった。

 パパらしいと言えばパパらしい。

 だけどママを悲しませちゃいけないと思う。


 なんかオトナってメンドくさい。

 ずっと小さい時から思ってた。

 みんな仲良くやればいいのにって。

 だいたいオトナって役割に囚われ過ぎているのよね。

 “親”とか
 “夫”とか
 “夫婦”とか
 “教師”とか
 “博士”とか
 “管理職”とか
 なんとか。

 そんなことは生きていく上での足かせなんじゃないかと思う。

 もっとみんな自分らしく生きればいいのに。


 友達でもそうだ。
 『うちのママなんてこうよ!』だとか
 『先生はちっともわかってくれない』だとか

 もう、
 どうでもいいじゃないって思っちゃう。

 コドモがオトナになったのがオトナなんだから、出来ないことがあったっていいじゃん。


 みんな基本ワガママなのよね。


 “こうでなければならない”とか
 “こうあるべきだ”とかね。

 

 私はそんなことより自由に生きたい。

 自由を感じて生きたい。


 だって、
 人が何を言おうが、
 朝の山はすごくきれいに見えるし、
 夕方の空気はなんか淋しげだし、
 雨の日は空気が重たげだけど
 雨上がりの草花はなんだか嬉しそうだし。


 かと思えば、
 気分が悪い時には世界はなんだか、
 やぼったく見えたりする。


 それって気分次第で世界が変わるってことじゃない!?


 なんでみんなそれに気付かないカナァ……


 そういえば私
 初めての飛行機でして。


 いや―飛ぶんですね!
 いやいや当たり前ですケド。

 ギュゥーン!
 ってなったら、

 ドドドォッ!
 となって、

 ビィヤー!
 と飛びましたよ。

 これを体感した時には
 『パパ飛行機乗りたかっただけじゃないのか?』
 と思ったほどでしたね!


 いやぁ興奮しました。


 思わず
「ビバ飛行機」
 とツィートしてしまいました。

 すると隣の太っちょマダムがプゲラプゲラ笑うものだから、一緒になってプゲラプゲラ笑ってしまった。

 んで、
 マダムとは何故か仲良くなり、
 うちの家族メンドくさい談義に花が咲きまして。

 マダムは息子が日本に留学しているらしく。

 なんだか『サカナクン』という人をリスペクトし過ぎて日本へ行ったというアクティブな息子さんをお持ちで。

 私はここ最近で一番必要のないと思われるマダムの息子の話を聞かされるハメになりました。

 まぁまぁ、
 旅の始まりとしては悪くない出だしですね。


 パパ―待っててねー!