不倫にもいろいろな場合があって、本当にそれぞれの痛みと苦しみがあると思います





全てが同じ状況なんてありえない





そして私もその内の1人





サレ妻でした





今も夫婦円満ではありません





(詳しくはテーマ 不倫にまとめています)





そんなそれぞれの経験に少しでも寄り添えるように様々な不倫物語(創作)を少しブログに載せてみようと思いました





サレ妻はる監修 不倫物語





読んでいただけたら幸いです



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「ネクタイ曲がってる」

鏡の前で身支度を整える夫、健二の前に行き、私は少し曲がったネクタイを直した。健二は満足そうに微笑み、私の肩に手を置く。

「いつもありがとう。香織がいてくれるから、俺は外で思い切り戦えるよ」

その言葉にきっと嘘はない。
商社マンとして経験を積んできた30代後半の健二は、非の打ち所がない「理想の夫」だった。
高身長で清潔感があり、週末には一緒にテニスを楽しみ、記念日には必ず花束を欠かさない。近所の人からも「絵に描いたような幸せな夫婦」と羨望の眼差しを向けられていた。
掃除の行き届いたリビング、季節の食材を取り入れた料理、健二がいつでも帰ってきたいと思える家庭になるように私も努力していた。
その日も、いつものように穏やかな夜が更けていくはずだった。






「先に風呂入るよ」

健二が浴室へ向かった数分後。脱衣所の棚に置き忘れられた彼のスマートフォンが、短く震えた。
普段なら気に留めることもない。でもなぜかその夜に限って、画面に浮かび上がった通知のプレビューが私の視線を捉えて離さなかった。

『次の旅行は二人だけでゆっくりしようね。楽しみにしてる。』

送り主の名前は「美咲」
健二が最近よく話題に出していた、優秀で気が利くという若手部下の名前だった。
心臓が耳元で鐘を鳴らすように激しく脈打つ。
指先が氷のように冷たくなり、呼吸の仕方を忘れたかのような錯覚に陥る。
私は震える手でスマホを手に取り、ロック画面を凝視した。通知はすぐに消えたが、目の奥にその甘ったるい文言が焼き付いて離れない。

「香織? バスタオル新しいの出しておいてくれた?」

浴室から、健二の屈託のない声が響く。
その声を聞いた瞬間、私の中で何かが音を立てて冷たく結晶化した。
悲しみではない。激しい怒りでもない。
それは、大切に築き上げてきたはずのこの2人の世界を、汚い手で壊されたどうしようもない拒絶だった。
私はゆっくりと深呼吸をし、スマホを元の位置へ、1ミリの狂いもなく戻した。
鏡に映る自分の顔を見る。
頬は少し強張っているが、瞳は冷静だった。

「今出したところ」

私は声を整え、気持ちを落ち着けた。
ここで問い詰めるのは得策じゃない。
逃げ道を与えず、言い訳を封じ、彼らのすべてを自らの手で崩させる。
そのためには、まず徹底的な「証拠」が必要だ。