万年筆がすきだ。
普段、パイロットの一番安いカヴァリエシリーズを使っているのだが、青のカヴァリエを仕事中に落として壊してしまった。
それを悼みつつも、こんどは焦げ茶色が出る万年筆がほしいなあ。
と思って探すと、パイロット万年筆は焦げ茶のカートリッジはなく、私の大好きな和の名前の色彩雫という、ボトルのインクがあり、そこで初めて、万年筆とは専用のコンバーターでインクをいれる物だと知った。
で、木の軸の万年筆がほしくていろいろさがした。
インクは土筆つくしにした。
土に筆、なんて、いかにもっぽくてすてきじゃないか。
ただ、万年筆の本体を売る店って、ほんっとーに少ない。
文房具屋さんにもカヴァリエかプラチナの蒔絵シリーズ。
もしやと思ってデパートの紳士用品売り場に行ってみたら、パーカーにウォーターマンにモンブラン。
輸入物ばっかりだ。
僕がほしいのは日本の技術で作られた、日本どこへ行ってもインクが手に入るパイロット。
それが、ない。
アマゾンにはある。
でもなんかいや。
飼うなら手にとって、私の手になじむかたしかめて。
この辺、茶器と感じていることがにている。
足で探した。
錦糸町、大宮、北千住。
いける範囲で文房具店に片っ端から入ってため息をついた。
北千住に一見の文房具屋を見つけた。
余りに小さい、町の文具屋というふんいきだったので期待していなかったが。
木製のショーケースに、レジの周りには100種ほど、一面の万年筆がかがやいていた。
それこそ宝石のような値段のカスタムメイドまできらきらと。
ペンを探す旅の途中で出会った、パイロット本社の博物館とはちがう。
あそこにある年経た万年筆もどくとくのおもむきがあったが、こいつらはぉれからつかわれるのを待って輝いている。
丁寧に髭を刈り込んだ、いかにも好事家そうな店主が、丁寧に取り出し、試し書きをさせてくれる。
ペン先は24金。
すばらしい書き味だ。
ちょっと今の僕には万単位の買い物は厳しい。
カードは使えますかときいたらうちはそういうのはしないんですよと穏やかに断られた。
財布のお金は足りなかった。
コンバーターの使い方を教えてもらい、ひとしきり店主と万年筆を眺めてからみせをあとにした。
アマゾンなら30offで売っている。
でも僕はあの店で買いたい。
翌日おろした一万円をにぎりしめ。
これで手持ちのかねとあわせれば足りるはずだ。
店主と目が合う。
。
昨日はどうも。
ペンLEGNOをもう一度さわらせてもらい。
一応ワンランク上、25000円のカエデ製のものをさわらせてもらうが、どうも重量バランスがしっくりこない。
最高ランクの52000円のイチイ製の物直アドナビはさすがにさわれなかった。
でも色目と木目が好きでない。
LEGNOをにぎりなおして、購入決定。
インクはやっぱり土筆。
美しい茶の色。
コンバーターをふたつつけてくれて、財布の中を探ったらコンバーターの分までお金が足りなかった。
本当にギリだったのだ。
お返ししますと袋を開けようとするといえ、いいです。
と店主が制した。
末永く大事にしてください。
いまどき、万年筆を使おうという人はあまりいないのだろうか。
でもインクさえ換えれば、ずっと使える、そんなところが、きにいってるんだよ。
あなたの使ってるペンは、何。
そのとき、家族や友達のように自信を持って紹介できる、私のペン。