稽古初期に一人ずつのザックと会話がしたくて台本にないセリフを言ってもらったことがあります


あるインプロ(台本にない即興的な)での会話

お題は「ミュージシャンになりたい」と父親に言う会話

時期は1幕ラスト後

パパが自分を無視することに立ち向かうと決めたザック



とあるザック

「僕はミュージシャンになりたい」

何だと?

(語気を強めてまっすぐに目線をそらさずに)「ミュージシャンになりたいです!」

なるほど わかった 今度の保護者会で先生ともお話をしよう

それでいいか?

「(こくんと頷く)」

ではそのときに時間を作ろう

おやすみ


そんな会話だったと思います


もう一人のザックの場合

「僕はミュージシャンになりたいです」

なに?

(意識を強めて)「僕は世界で活躍するミュージシャンになりたいです!!」

なるほど そうか

でもお前は宿題もしない

ママの手伝いもしない

このままじゃ許すことはできないな

「それでも 今やらなきゃ 早くやらなきゃだめだと思います」

パパはもちろんお前の邪魔をしたいわけじゃない

応援もしたい

たが 人間が生きていくうえで義務と権利というものがある

今のお前を誰が信用してくれる?

やりたいことをやりたいと言うだけでは

ただのワガママじゃないか?

「(無言)。。。」

では条件を出そう

君が今から卒業するまで成績をオール5にすること

遅刻をしないこと

それが達成できれば許そう

「そんな。。。 そんなの無理です」

プロになるということはそれよりももっと大変なことなんだ

それもクリアできないなら やりたい気持ちもそれくらいということなんじゃないか?

「わかった やります」

そうか 期待しているよ

頑張りなさい


そんな会話を二人と即興でしていました。

お陰でラストにこの歌を歌いながら

必死に仲間たちと笑顔でギターを弾いている姿を見たとき


あぁこの子は成長していると 役の上でも

リアルな日向さんと音さん それぞれに感じることができました


天才ミュージシャンは芝居も楽しんでやってくれて

私も刺激を頂いてばかり

周りからも親バカと言われましたが

親バカ上等! こんなに誇りに思ったことはありません


いや ずっと誇りに思っております

大人の事情で子供との写真をとれなかったのですが

心のなかにこの貴重な経験を刻んで

私もこの物語の幕を下ろそうと思います


本当に本当にありがとうございました


安福毅(やっきぃ)