コロナあがりでかすれた声を少しでも労わろうと
お口の中にはまだ、龍角散ののどすっきり飴が
ネチョネチョと転がっていたが、構わずにマイクに向かって叫んだ!
とろ~り月見チーズフィレ バーガー単品で3つと
エッグタルト 単品で3つ ... 以上でお願いします。
注文を繰り返す、あまりにも自信なさげな声の大きさと張りに
一抹の不安を感じながら、俺は曲がりくねったワインディングロードを
華麗なハンドルさばきで車を前へと進めていく。
距離は短いが、前のベンツにオカマなど掘らぬよう、
微妙なアクセル加減とブレーキの踏み分けにも細心の注意が必要だ。
どっかのご老人のように
「いやぁ~ ブレーキとアクセル、踏み間違えちゃって...
」
なんて言い訳は黒塗りのベンツには通用すまい。
どんだけお高い月見バーガーだよ ! なんてことになったら一大事だ。

何とか無事に窓口まで到達すると、
受け渡し口から、四千頭身の都築拓紀にそっくりな
女性店員がヌメ~っと窓を開けようとしていたその矢先、
後ろから、横沢夏子にそっくりな、いかにも都築の上司的存在で
この道一筋十数年、仕事バリバリ出来ちゃいます風な女性が
顔を出してきて、大変申し訳なさそうな表情と声色で俺にこういった。

「エッグタルトの作り置きが、ちょうど先ほど売り切れてしまいまして、
今からですとお時間7分ほどいただくようですがいかがでしょうか
?」と。
これからニワトリがエッグを産むまで待ってくれ !![]()
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と言われているわけでもあるまいし、7分間、思いがけずに
月を見上げる時間が出来たと思えば、それもまた風情なもの、と
快く「大丈夫ですよ」と返事をして、横沢夏子は忙しそうに、
また店内奥へと消え去っていった。
先に会計を済まし、スマホゲーム「蒼焔の艦隊」に目を落とし始めると、
ものの3分も経たないうちに都築拓紀が合図を送ってきたので車の窓を開けた。
「お待たせしました! まずはこちらお飲み物で... あとこちら残りのお品物です」
「ありがとう。」
手短に都築拓紀似女性クルーに礼を言い、このミッションを言い放った
ボス(ヨメ)と中ボス(娘)のもとへと家路を急いだ。
で、
最初の信号で止まったときに思ったよね。 気付いちゃったよね。
あれ? 俺、そーいや 飲み物なんて注文してねーぞ ! ってさ。
朧ってる月に、見下されているような人間界の一コマ。
このままシレ~っと家になんか帰ったら、
月に代わってお仕置きされちゃうよね。
てなわけで、また戻ったわ。
横沢夏子と都築拓紀のもとに... ![]()
チコちゃんにバレたら叱られちゃう....![]()
はい、気をつけます ![]()
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