
持ち主を知っているスペアキー
18時17分
空は青から濃紺へと変化し、町の明かりがグラデーションをかけ始めた
僕が幼い頃に遊んだ道の上には、
highwayが君がいる83km先の西の町に向かって
定期的な明かりを伴いながら続いている
君がいる場所がA地点としたら、僕が現在(いま)いる場所はB地点
B地点は時速70kmでA地点へ向かっている
自分の仕事にウソがつけずに
スペアキーをシューズクロークにおいて西の町に移り住んだ君は
キャリアを終わらせ
いくつかの恋を終わらせ
半年前に僕に電話をくれた
「まだ一人?」
「スペアキーはずっとシューズクロークだよ」
B地点はA地点まで5kmのところを接近中
君は大きなボストンをロックして
何もなくなった部屋の電気を消す
僕はA地点まで2Kmのhighwayのインターチェンジを降りた
バックミラーにはスペアキーが揺れている

彼女の好きな場所
アパートメントの2階に上がる階段
階段の横は南南東に面して大きくガラスが張られている
その場所は僕らの部屋の新しい朝への入口で
日が傾くと外の木々が散りばめられた落ち葉の上に長い影を伸ばす
君はその階段の3段目に座ってお気に入りの小説を読んでいる
そしていつの間にか眠ってしまう
僕は慣れた手つきで階段の4段目からカーディガンを
そっと君の肩に掛け、いつ目覚めてもいいように
キッチンのコーヒーメーカーのスイッチをONにするんだ
2年の月日は階段に君の残像だけを残した
僕はあの時と同じコーヒーメーカーにスイッチを入れ
ひとつなくなったカップにそそぐ
西の町に引っ越した君は今でも階段の3段目で
寝息をたてているだろうか


