この物語はフィクションです。登場する人物、団体、モノや地域やその他もろもろは、架空のものであって絶対に実在してはならないってほどでもないけど、訴訟とかになってもいやです。したがって、そのあたりは寛容な読者であってほしいと思っています。どうかよろしくお願いいたします。
午後の市営バスは乗り降りする客も無く、気だるい時間が流れていた。
走るバスには高梨とせいたんとメッフィーと乗客数人と運転手がいる。
「高梨さんは眠っているよ」せいたんでさえ眠くなる。
「人の夢の中なんですね、これが」メッフィーにとっては新鮮な感覚だった。
高梨の夢
俺が多田さんとバイトをしてたのは学生の頃だった。
今、バスを運転しているのは多田さんで俺は助手席に座っている。
教科書に出ているようなサバンナ地帯が続いている。
乾季なのか下草はほとんどが枯れてやや高い木には緑の葉をがついている。
「ナシちゃん、次の基地で運転代わろう」多田さんが視線を前に向けたまま言った。
「キリンか。ああ、はい」ナシちゃんこと俺は返事をしながらまたキリンを見つけた。
さっきからキリンばかりで、まだライオンや象は見ていない。
急に基地に到着した。いつの間にか回りはジャングルだ。
この補給基地で、兵士を下ろしてから難民を乗せてを国境を越えた先の難民キャンプへ移送する、そういうバイトなのだ。
『ちなみに時給は800円で土日は1000円、日曜日は戦闘が少ないのに時給が高くおいしい』と多田さんが教えてくれた。
金網に囲まれたこの基地は木々がうっそうと茂りその隙間からわずかな光が差すだけ。
薄暗い中、俺と多田さんは乗車口から乗り込む難民たちを観察した。
「難民を装った敵もいるらしい、爆弾とか持ち込まれたら洒落にならんからなー」多田さんは声に出して言ったが、難民たちには日本語が通じないから大丈夫だ。
敵という言葉が出てくると、ここが戦地だということ思わざを得なかった。
ガソリンスタンドのバイトより楽だと聞いてきたけど、どうなんだろ。
「女子供と言えど安心できないぞ、少年はやばい。特にやばい、日本の戦時中の軍国少年とか怖いぞ本気だからな。大人になれると思ってない、死ぬつもりだからな」多田さんの発言が人権とかそういうところからクレームが来ないか少し不安になった。
でも、多田さんが席順を入れ替えさせて女と小さな子供が前、やばそうな少年や男たちを後ろの方へ座らせたので、俺は少しは安心することが出来た。
「じゃあ、運転よろしく」多田さんは助手席に腰を下ろした。
「りょうかーい」僕は答えた。
ああ、このバス。クラッチ付いてら。
「何なんですか。この夢」メッフィーが目を瞬かせながら言った。
「こんなもんだよ、人の夢なんて。メッフィーちゃんは夢見ないの?僕はよく戦艦の艦長とか提督になる夢を見るよ。大体被弾してるよ、むごいよねという夢。眠る必要は無いけど暇なとき眠る」
「時間を超えるせいたんさんに暇という概念があるのですか?」
「時間を超えるについては詳しく話すと長くなるので、あとで説明しよう。今は高梨さんの夢を鑑賞しよう」
続く。