せいたん パート3 その4
高梨が病院を出て行く。清算を済ませ、14日分の薬の入ったビニール袋を提げて。
自動ドアが開いた。
「追うのでしょう?」メッフィーが言った。
「高梨さんの所在は知れてる」
少し昔を見てみよう。高梨さんの過去を。
「僕は時間を超える、そしてメッフィーは空を飛ぶという。飛べるのかメッフィーちゃんは?」
「飛びます、飛びますよ。しかし時間を超えるって?」
「僕の薬が出回る前の高梨さんを見よう、この世界のひとつの側面。ルートから外れてしまった人間を」
「残酷ですね」メッフィーは少しまじめな顔つきで言った。
「だから直そうとしている。現実って何かを」
「神の真意や意味とか?」メッフィーは不安げだ。
「実情を見よう。ただそれだけだ」僕にはそれしか分からなかった。
何を見るのかを知らなかった。
時間と空間と重力に抗えない生き物の精神を直視せよ。
僕にも魂というものがあるのなら、それがそう告げいるようだった。
つづく。