『イワンとポポフ』 (2001/7/30)
1.
家で眠っているとき、ペンギンのイワンがやって来た。「ポポフさん、起きて。オーロラ、オーロラだよ!」ポポフは白い大きな体で寝返りを打った。「イワン。オーロラくらいで俺の眠りを妨げるな」ポポフがソ連から北極へ異動になってから10年。祖国はロシアになってしまった。白熊のポポフにとってオーロラなんて忌々しいだけだった。「サーカスに行くか、北極に行くかだ」上官にそう言われた。サーカスのほうがマシだ。ポポフはそう思うようになっていた。「ポポフさん。米軍の偵察機だよ。オーロラだよ」「イワン。今、なんて言った!?」つづく。
2.
ポポフはベッドから飛び起きた。写真機を抱えて外へ。「ポポフさんあそこだよ!」イワンが指差す方向にレンズを向けた。「何て姿だ」それは従来の航空機とは明らか異なっていた。深海の生物のようだ。およそ飛べるような形ではない、信じがたかった。しかし、現に空にいた。オーロラは米軍が秘密裏に開発を進めているとされる新型偵察機だ。超音速で巡航し、マッハ5以上の速度が出せるという。米軍はUFOを作っていると噂するものもあった。ポポフはわずかな装備のひとつ、日本製カメラのシャッターを押しつづけた。つづく。
3.
「ポポフさん、上官に連絡するんだよね。ご褒美はなにかな?ウォッカ、キャビア、いいな」ポポフはもうひとつの装備、電話機で久しぶりに祖国のロシア語を聞いた「ポポフ。よくやった。何か欲しいものはあるか」上官は冷淡に言った、いつものことだ。「私をロシアの部隊に戻して欲しい」ポポフは率直に希望を述べてみた。「ポポフ。きみの任務はわが国にとって有益だ。今回の情報も、我々は高く評価するだろう。だが、それは出来ない」上官はあっけなくいった。つづく。
4.
「ほかに望みはあるか」そう言われて、ポポフはペンギンのイワンの顔を見た。「ウォッカか、キャビア。出来れば両方」ポポフは言った。イワンの表情が晴れた。「聞き入れた。期待して待て」上官は電話を切った。「期待して待て。だってよ」ポポフは肩を落とした。「ポポフさん、ずっとここにいてよ」。素直なヤツ、ポポフは思った。「イワン。届いたらいっしょに飲もうな」 。本物のオーロラを見ながらウォッカを飲みたいものだな。
おわり。
家で眠っているとき、ペンギンのイワンがやって来た。「ポポフさん、起きて。オーロラ、オーロラだよ!」ポポフは白い大きな体で寝返りを打った。「イワン。オーロラくらいで俺の眠りを妨げるな」ポポフがソ連から北極へ異動になってから10年。祖国はロシアになってしまった。白熊のポポフにとってオーロラなんて忌々しいだけだった。「サーカスに行くか、北極に行くかだ」上官にそう言われた。サーカスのほうがマシだ。ポポフはそう思うようになっていた。「ポポフさん。米軍の偵察機だよ。オーロラだよ」「イワン。今、なんて言った!?」つづく。
2.
ポポフはベッドから飛び起きた。写真機を抱えて外へ。「ポポフさんあそこだよ!」イワンが指差す方向にレンズを向けた。「何て姿だ」それは従来の航空機とは明らか異なっていた。深海の生物のようだ。およそ飛べるような形ではない、信じがたかった。しかし、現に空にいた。オーロラは米軍が秘密裏に開発を進めているとされる新型偵察機だ。超音速で巡航し、マッハ5以上の速度が出せるという。米軍はUFOを作っていると噂するものもあった。ポポフはわずかな装備のひとつ、日本製カメラのシャッターを押しつづけた。つづく。
3.
「ポポフさん、上官に連絡するんだよね。ご褒美はなにかな?ウォッカ、キャビア、いいな」ポポフはもうひとつの装備、電話機で久しぶりに祖国のロシア語を聞いた「ポポフ。よくやった。何か欲しいものはあるか」上官は冷淡に言った、いつものことだ。「私をロシアの部隊に戻して欲しい」ポポフは率直に希望を述べてみた。「ポポフ。きみの任務はわが国にとって有益だ。今回の情報も、我々は高く評価するだろう。だが、それは出来ない」上官はあっけなくいった。つづく。
4.
「ほかに望みはあるか」そう言われて、ポポフはペンギンのイワンの顔を見た。「ウォッカか、キャビア。出来れば両方」ポポフは言った。イワンの表情が晴れた。「聞き入れた。期待して待て」上官は電話を切った。「期待して待て。だってよ」ポポフは肩を落とした。「ポポフさん、ずっとここにいてよ」。素直なヤツ、ポポフは思った。「イワン。届いたらいっしょに飲もうな」 。本物のオーロラを見ながらウォッカを飲みたいものだな。
おわり。