この物語はフィクションです。そして、私の設定スキルの関係なのか、下から読まねばなりません。
お手数ですが、『せいたん パート3 その1』から読んでいただけると内容が分かりやすいか思います。
『せいたん パート1』は完成していますが、アップロードは未だしていません。『パート2』は書いてすらいません。せいたんパート3から読んで頂ければ幸いです。なのでせいたんパート1辺りのあらすじから。
【あらすじ】
全知全能たる神は、時間と空間を創造し、そこに天使たち」を住まわせた。
ある時神は「人間を創造」すると言い出した。
天使の一人「せいたん」は神の行為に反発した。
「私たち天使で何が不満なのでしょう?」
神はせいたんに人間界を見てくるように命じた。
せいたんには消える能力、時間を越える能力、人の心に働きかける能力。不死身。壁を抜ける能力、
などを与えられた。
いたんは人間界に送られる。炎の精霊から言葉を学び、その後初めて人間と接触する。
せいたんパート1では、紀元前500年ごろのインドの後に聖人と呼ばれる人物の心に触れ衝撃をうける。
 

 せいたん パート その3
 
高梨はだいぶ見えてきているようだ。
このレベルの人間が増えれば、人間社会は少しはましになるだろな。
でも、こうした方向での向上を主は望んでいるのだろうか。
 
「せいたんさん」
 
どこからともなく声がする。
 
「せいたんさん」
 
しつこく呼んでいる。姿が見えずに声だけがする。
すなわちまともな奴じゃないことは分かる。
おれは「誰だい?」と答えてみる。
現実に存在するものではないものに、声をかけるのは馬鹿なことだろうか。
姿が見えた。片足が牛。
一言で言うと悪魔。厳密にいうと悪魔役の天使。
「お前か」おれは言った。
人間界では空想上の存在。空想されるだけでそれは存在しうる。
奴の名を呼んでみた。
「メッフィーちゃんだな」
「光栄ですね。私の名をご存知」
やつの姿が見え始める。お芝居の登場人物のような格好。
羽の付いたベレー帽、白いシャツに格子柄のベスト、紐のタイを結び、ぴかぴかの靴。
それはどこへ行く服装なのだと、問いただしたいが、見えない者には見えないのだろうからそれには触れなかった。
かわりに
「メフィストフェレスが存在するとはな」とだけ言った。
「あなたが作った聖人を見に来ました」メッフィーが言った。
「また賭けるのか。ファウストのときみたいに」俺がいうと、メッフィーが笑った。
「あなたの方に、自信がないのでしょう。せいたんさん?」
「おれには力などないんだ、メッフィー。お前が勝ってもやるものなどないぞ」
「そうでしょうとも。私は神との勝負を望んでいる。その人、高梨を試すなどという気はない」
「では何が望みだ。メッフィーよ」
「21世紀に聖人など流行りませんよ。あなたと同じです。行く末を見たいだけ。
しかし、高梨が望むなら接触するのも面白そうですね。」
僕はメフィストフェレスの心に入ってみようと試みたが、人間相手のように簡単には行かない。
メッフィーにどれほどの力があるのか今は、分からない。
メッフィーには高梨をてなづける力があるのか、高梨の聖人としての完成度がどれほどか、見当がつかない。
「メッフィーちゃんや、もう少し様子を見ようじゃないか。お互い悪魔と目されている縁もあるし」
「何かを恐れている?サタン(せいたん)が?」メッフィーは侮蔑を含んだ笑みを浮かべた。
「堕天使がなぜ存在しうるか考えたことがないのかい?」今度はおれがメッフィーに聞いた。
「人間を淘汰するシステムを構築するためですよ。有害なものも存在します、世界には」メッフィーは首をかしげながら言った、当たり前だろうというように。
 
つづく