書き出しに一目ぼれ | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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「それは最もよい時代であると共に最も悪い時代であり、賢い時代であると共に愚かな時代であり、信仰の時期であると共に懐疑の時期であり、光明の季節であると共に暗黒の季節であり、希望の春であると共に絶望の冬でもあり、我々の前にはすべてのものがあるが、何もなく、我々はまっすぐに天国に行くようでもあり、反対の方向に行くようでもある。」

ディケンズの「二都物語」は、このような雄大な書き出しで小説の幕を開けるが、この言葉は小説自体と同じように多くの人々に知られた名文である。後世のどれほど多くの読者がこの言葉に惹きつけられて、この本をじっくり読もうという気持ちになったことだろうか。もちろん、一冊の本を選んだり評価したりする基準は、人によって異なる。だが、目がくらむほどたくさんの表紙や書名に向き合った時、我々は何によって心を動かされ、一冊の本を書棚から抜き取り、家に持ち帰るのだろうか?好きな作家だから?装丁がすばらしいから?内容説明に惹かれて?あるいは値段がリーズナブルだから?私たちはこれらの条件に左右されながら、人生の中でそれぞれの本に出会っているのだ。


本屋で一冊の本を手に取り、最初のページを開いて最初の文を読んだ時、たちまちそれに深く引き込まれて、ついついその場で最後のページまで読んでしまう……。そんな経験がみなさんにもあるのではないだろうか?このような「一目ぼれ」の理由は人によって異なり、解明することはできない。しかし私は、どの本の最初の言葉にも、作者の思いや慎重さが満ちていて、それゆえに我々はその本に「一目ぼれ」してしまうのだろうと思う。


一人一人の読者に、本とこのようなロマンチックな出会いをしてもらうために、紀伊国屋書店新宿店では「ほんのまくら」フェアを行っている。これは「本を枕にする」という意味ではなく、「まくら」とは「本の出だし」のことなのだ。本の最初の一文だけを鮮やかな色でカバーに印刷し、作者名も書名もなく、何の説明もない。読者は、長かったり短かったり、タイプもまったく異なるこの一文によって一冊の本を選び、購入してからカバーを取って初めて書名と著者を知る。書店員たちはこのイベントのために百冊の本を精選した。この時、「雪国」などの出だしが有名な作品は選ばないようにし、非常にシンプルな方法で本を選んでもらうようにしている。本を選ぶときの思考とためらい、決定した時の決心、さらに買ってからカバーを外す時の緊張。こんな「ロマン」が多くの読書家たちを刺激し、イベント期間には一日700冊以上の本が売れたそうだ。みなさんもこんな本との「ロマンチックな出会い」はいかがだろうか?たった一つの言葉が心を動かし、一目ぼれから心の旅が始まるのである。













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