ペアで楽しいクリップ | 「週刊・東京流行通訊」公式ブログ

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東京に暮らす中国人が見た、リアルタイムのこの国のすべて・・・

世界中の人々がそれぞれ違った個性を持っているのと同じように、ありきたりの文房具であるクリップに独自の個性を持たせることができたら楽しいと思う。忙しくて夢中で働いている時に、心を休ませてくれるような「遊び心」を加えたり、特別に重要な人に届ける資料に、心のこもったメッセージを添えたり……、書類をとじるという単純な機械的行為でも、この可愛らしいクリップを使えば、一気に楽しいものに変わるに違いない。


デザインユニット「SPEAKER Inc.(スピーカーインク)」と老舗文具メーカー「サンケーキコム」が共同開発した「ペアクリップ」は、金属部分をte(手)、ashi(足)、hito(人)の形に改造した世界初のダブルクリップで、シンプルで明瞭なデザインコンセプトによって、黒い本体と針金でできた単調なダブルクリップに、新しい生命力と味わいをもたらしている。


te(手)は、手のひら同士が合わせられる瞬間の形になっていて、中国語の「孤掌難鳴」(片手では音が出ない=一人では何もできない)という言葉を思わせる。二つの手が合わさって書類をとじた時に、「両手」で書類を支えるという重要な機能が発揮されるのだ。ashi(足)は大地にしっかり足をつけてまっすぐに立つ形を表現し、ちょっと後押しすれば「千里之行、始于足下」(千里の道も足元から始まる)というわけで、書類と共にどこまでも歩いていってくれそうだ。hito(人)は両腕を広げてパートナーに呼びかける形で、これをとじれば互いにハグすることができる。クリップたちがこれらの望みをかなえられるかどうかは、使う人の温かい心にかかっているのである。


中国には昔から、「一手独拍、雖疾無声、二人同心、其力断金」という言葉がある。「一つの手では音が出せないが、二人で心を合わせれば金属すら断つことができる」ということで、力を合わせることの大切さを強調している。この商品が「ダブルクリップ」ではなく「ペアクリップ」と呼ばれるところには、「協力する」だけでなく、「パートナーになる」という願いがこめられているという。また「ペアクリップ」のピンク、グリーン、ブルー、パープル、ブラックの5つの色には、それぞれ日常の無味乾燥な仕事に、楽しく幸せな気分をもたらそうという考えが含まれている。


もともとは生命のないクリップに生命の形が与えられると同時に、「人との縁」という楽しくなるような意味がこめられている。デザイナー独自の美的感覚と創造の精神が、ここにも見え隠れしている。


有限会社スピーカー http://speaker-inc.com/