Netflixの「アメリカンマーダー」シリーズで、シャナン・ワッツをめぐる一家殺人事件を見ました。
事件の残虐さはもちろんですが、それ以上に、登場人物の心理や家族のあり方など、いろいろなことを考えさせられる事件です。
https://www.netflix.com/jp/title/81130130?s=i&trkid=264338232&vlang=ja&trg=cp
シャナン・ワッツ事件 ― 世間の関心と議論の俯瞰
事件のあらまし
2018年8月、アメリカ コロラド州フレデリックで、妊娠中の妻シャナン・ワッツと幼い娘2人が行方不明になり、その後、夫クリスが彼らを殺害したことを認める――という非道な事件が発生しました。
裁判で夫は終身刑となっています。
事件は多くの人々に衝撃を与え、様々な視点から議論される事件となったようです。
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事件をめぐる様々な議論
1. 犯行の「動機」 ― なぜ普通の父親があそこまで残酷になったか
まず、この事件で最も注目されたのがなぜ夫が家族を皆殺しにしたのかという動機です。
ドキュメンタリーや報道ではクリスは妻との関係不和、愛人の存在、第三子の妊娠――といった家庭内のストレスを抱えていたことが紹介されましたが、
これ自体はまぁ是非はともかくよくあることの類。
それがなぜ突然の豹変し子供まで手にかける冷淡さを持つまで突き進んだのか――
“普段は普通の父親/夫だった人間が、なぜ‥
ときめきを感じなくなった夫婦関係、経済的行き詰まり、最後に背中を押した愛人との逃避願望といった複数の要因が絡み合ったことが想像されますが、
舞台が家族と言う極めて閉鎖的な環境ということもあり、周りがどれだけ憶測を重ねてもたどり着けない闇が最後に広がります。
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2. SNS時代の“完璧な家族イメージ”とその裏側 ― 演出か現実か
もうひとつ、注目されたのは“彼らの見えていた家族像と実際の中身”とのギャップ、そしてそれが SNS やメディアで拡散されたことです。
事件直前まで、被害者家族は SNS や Facebook を通じて「理想の家族」「幸せな妊娠中の母親」「仲良し家族」というイメージを頻繁に発信していました。
「SNS時代の家族」「見せる家族」の裏側にあるものは何なのか考えてしまいます。
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3. いわゆる嫁姑問題〜長年の心理的重荷に
クリスは、結婚前から「実家と妻の折り合いの悪さ」の板挟みになっており、結婚を機に実家というひとつ心理的な“拠り所”を失っていた可能性があります。
シャナンのことが気に入らないと言うことで、クリスの両親は結婚式に出席していませんし、
その後も、子どもたちの食物アレルギーをめぐる問題などで妻と実家の両親との衝突が続き、クリスは長い間、双方の間に立たされる形でした。
結婚生活の“ときめき”が薄れていく中で、こうした継続的な緊張は、彼にとって重荷として蓄積していった側面はあるでしょう。
もちろん、このような状況に置かれたからといって、家族殺害という極端な行動に至ることは極めて稀で、妻と義家族の不仲が“原因”であるとか、彼が免責される理由になるわけではありませんが、
しかし、彼の心理がどのように崩れていったのかを理解する上で、こうした家庭内のストレスは「背景要因のひとつ」になるかもしれません。
4. “愛人” と周辺人物の役割 ― 共犯性、情報操作、社会の責任
夫婦だけでなく、愛人ニコルの関与や情報のあり方も大きなテーマになりました。
事件後、多くの人が「愛人がいた」「家庭崩壊のきっかけでは?」という仮説を立て、彼女の言動、携帯の通信履歴、行動、証言などをめぐって検証がされたようで、ネットでは「共犯の可能性」「情報隠蔽」「証言の信頼性」を問い直す声もあったようです。
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5. 犯罪ドキュメンタリーと “リアル映像” の衝撃 ― 真実と演出の境界
今回のドキュメンタリー映像の特筆すべきところは、夫婦の SNS 投稿、警察のボディカメラ、取り調べ映像、メッセージ履歴などが多数含まれているところ。
いわゆる再現Vではなく、警察が最初に犯人クラスと接触するところ、挙動不審なクリスに対する近隣住人の冷静な目線、そして自白まで、全ての“現実” をそのまま見せる構成がリアリティーを産んでいます。
そして「これがリアルなら、我が家の隣近所にもこういう“普通の顔をした狂人”が潜んでいるかもしれない」という怖さも生み出し、まさに英語タイトル、The Family Next Door に繋がっています。
感想
家庭内の殺人事件は少なからずありますが、この事件は“単なる残虐性”では説明できない、「普通の家庭」「普通の父親」「普通の母親」「普通の生活」が、ある日突然“地獄”になることがある、という強いメッセージがあったように思います。
特にSNSで発信されていた「理想の家族」「幸せな夫婦」「育児とキャリア」のイメージは実に儚い。
機能不全となった夫婦関係について、夫から言いたい事はあったでしょうが、最後にとったアクションは、許されるものではありませんでした。
RIP.
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