2011年9月15日のことです。ツイッターに次のようなツイートが流れたのです。――――――――――――――――――――――――――――― 9月17日。ウォールストリート。テントを持ってこよう――――――――――――――――――――――――――――― これだけでは何のことかわからない。そこでこのツイートに付いているURLをクリックすると、環境問題などを扱う雑誌「アドバスターズ」のブログに導かれ、そこに黒字に黄色の文字で、「オキュパイ・ウォールストリート」の題字と次のメッセージが表示されたのです。――――――――――――――――――――――――――――― (エジプト・カイロの)タヒール広場を再現する準備はできて いるかい。9月17日、テントを、キッチンを、平和的なバリ ケードを設けて、真の民主主義を失墜させるゴモラ(聖書の中 の腐敗と罪の都市)である米最大の金融街ウォールストリート を占拠しよう。 ──「ダイヤモンド・オンライン」 http://bit.ly/1mL6aCf――――――――――――――――――――――――――――― 「オキュパイ・ウォールストリート(OWS)/ウォールストリートを占拠せよ」という呼びかけに呼応し、ウォール街には多くの若者や失業者などが集まってきたのです。 しかし、数千人規模のデモは日常茶飯事の米国において、そのデモはメディアの注目を集めるに至らなかったのです。規模も小さく、その目的も必ずしもはっきりしなかったからです。ところが参加者の顔ぶれはいつものデモとは違い、組合員やヒッピー世代は皆無であって、彼らよりずっと若い10代後半から20代前半が中心で、これまでデモになど参加したことのない世代が中心だったのです。 そのような穏健なデモ中に警察が無抵抗の女性に催涙スプレーを使ったことから、ことは大事になったのです。市内の組合や人権団体がOWSの支持を決定し、有名映画監督のマイケル・ムーアや女優スーザン・サランドンもデモに参加するようになったことから、CNNをはじめ各メディアは報道を開始したのです。 これに加えて、ライブビデオやツイッターで日々の活動を追う全米各地の若者が、ロサンゼルス、ボストン、シカゴなどの金融地区で座り込みを始め、これがあっという間に世界各国にも飛び火したのです。その結果、約1ヶ月後の10月15日、経済格差に反対する「オキュパイ・ワールド」として、世界82ヶ国1500都市で、デモやイベントが開催される騒ぎに発展するに至ったのです。 2007年から日本金融財政研究所長を務め、衆参の予算委員会でも発言の機会を与えられている経済アナリストの菊池英博氏は、このときウォール街の近くの公園に座り込みをしている若者たちの多くから直接見を聞いているのです。彼らの意見を要約すると、次のようになります。――――――――――――――――――――――――――――― 金持ちはどんどん裕福になるけど、ほとんどのアメリカ人の生 活は向上するどころか、日々、貧しくなる。リーマンの破綻で 金融革命は失敗だったことが明らかになつたのに、政府は大手 銀行や企業にパブリック・マネーを入れて救済した。しかし、 経営者は責任を取らずに高給を取り続け、クビになるのは俺た ちだ。ひどく不公平な国だよ。われわれ99%の国民が犠牲に なる。オバマもどうかしている。99%を救ってくれる人がい ないのだ。はらわたが煮えくりかえるよ。 ──菊池英博著 『そして、日本の富は略奪される/ アメリカが仕掛けた新自由主義の正体』/ダイヤモンド社――――――――――――――――――――――――――――― このウォール街でのデモは、2011年1月にチュニジアで始まり、その後エジプトに波及、それからスペインに広がった抗議運動と明らかに連動しています。そして今ではグローバルになり米国各地の都市を覆っているのです。 この騒ぎの発端は、12日のEJで述べたノーベル経済学賞受賞経済学者、ジョセフ・スティグリッツ教授の論文「1%の1%による1%のための」にあるといわれます。なぜなら、ウォールストリートに近い公園に集結していた若者たちは、手に手に「われわれは99%だ」というプラカードを持っていた人が多かったからです。それは、「99%の国民を救ってくれ」という悲痛な叫びなのです。 このジョセフ・スティグリッツ教授の論文「1%の1%による1%のための」は、次の書籍にまとめられています。――――――――――――――――――――――――――――― ジョセフ・スティグリッツ著/楡井浩一/峯村利哉訳 『世界の99%を貧困にする経済』/徳間書店――――――――――――――――――――――――――――― これについては、これから詳しく述べていきますが、「週刊ダイヤモンド」/2011年12月17日号では、この論文について次のように解説しています。――――――――――――――――――――――――――――― 人口の1%が富の40%以上を握り、所得の20%以上を手に しているのである。しかも、このひと握りの人びとがこれほど 大きな報酬を得ているのは、多くの場合、彼らが社会により多 く貢献したからではない。それは彼らが、ズバリ言うと成功し た(として時には腐敗している)レントシーカー(政治によっ て生み出される特権的利益を追い求める人々)だからである。 ──「ジョセフ・スティグリッツ『ウォール街占拠抗議運動を 招いた途方もない格差』」 /「週刊ダイヤモンド」2011年12月17日号 ──菊池英博著の前掲書より――――――――――――――――――――――――――――― ──[新自由主義の正体/03]≪画像および関連情報≫ ●スティグリッツ教授が暴く米億万長者の「秘密兵器」 ――――――――――――――――――――――――――― 2012年6月11日(ブルームバーグ):大衆主義を唱え るポピュリストたちの「われわれは99%を占める」という スローガンを打破するのは難しい。ただ、この大衆行動はこ れまで首尾一貫したメッセージと議題を欠いていた。これか らは違う。ノーベル経済学賞受賞者で米コロンビア大学教授 のジョゼフ・スティグリッツ氏は鉄鋼の街、インディアナ州 ゲーリーで育った。 刺激的な新著「The Price of Inequality」 で取り上げたこ のテーマについて数十年にわたって研究を続けている。教授 の結論はこうだ。米国人の1%が所得の5分の1を稼ぎ、富 の3分の1以上を支配すると、経済成長や民主主義、上流階 級そのものさえもが支障を来す事態となる。まさに今日の状 況が示すように──。ジャーナリストのロバート・フランク 氏が「リッチスタン」と呼ぶ居住者についてスティグリッツ 教授は「富裕層は世間から隔絶されて存在しているわけでは ない。彼らは地位を維持し、資産から所得を生み出すために 機能する社会を必要としている」と指摘する。米政府は不平 等を減らすどころか30年かけてその逆の状況を助長してき たと教授は喝破する。市場をゆがめ、資金を社会の底辺と中 流から上流へと移行させたのだと。この見方によれば、政府 こそが億万長者たちにとっての秘密兵器なのである。 http://bit.ly/1j7SSgA ―――――――――――――――――――――――――――ウォール街でのデモ/2011年9月
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