Adieu Romantique No.717
『春の訪れはささやかな声で知らされる』
少しずつ春が近づいてきている。急に寒くなったり、また暖かくなったりを繰り返しながら、柔らかな空気や風や陽射し、そしてその光を浴びた草花や小鳥の囀り、或いはギターのアコースティックな響きや囁くような歌やハミングなど、春の訪れはとてもささやかな声で知らされる。
音楽はCurrituck Co.によるギター・インストゥルメンタル『The Tropics Of Cancer』から静かに始めよう。
📷️女性ならではのジェンダーな感受性で写真を撮る、スウェーデンの写真家リナ・シェイニウス【Lina Scheynius】。彼女の写真は春が一歩一歩、近づいてきていることをいつもセンシティヴに伝えてくれる。
もしかしたら、妖精の歌に耳を澄ましているのかも。
僕のブログではもう何度もセレクトしている曲。春の訪れを感じたい時に、この曲とこのMVは外せない。シンガポールの男女デュオ、アスピディストラフライ【Aspidistrafly】の2011年リリースのアルバム『A Little Fable』から『Landscape With A Fairy』。まるで春の妖精たちが「こっちにおいで」って言ってるような、そんな不思議でキラキラ✨した感じが眩い。
フローリスト【Florist】の2019年リリースの、とても素敵なアルバム『Emily Alone』から『Celebration』と『Time Is A Dark Feeling』。メンバーのエミリー・A・スプレイグのイノセントな歌とギター、そしてモジュラー・シンセの響きが紡ぐのは、春の微睡みに漂うような虚ろう世界。



ブラジル音楽をもう1曲。ガル・コスタ【Gal Costa】が1969年にリリースした、MPB(エミ・ペー・べー)【Musica Popular Brazileira】の名盤『Gal Costa』から。まるで春に吹く突風のようなカエターノ・ヴェローゾ【Caetano Veloso】とのデュエット曲『Que Pena』。
ガチャガチャしていて、少し大きな声だけど同じように春の訪れ知らせてくれる曲。josie の、カヴァー・アートが可愛過ぎるアルバム『a Life on Sweets Alone』から『Sweetie Pie』。
これは男性ボーカル。The Black Atlantic の、やっぱりカヴァー・アートが素敵な2009年リリースのアルバム『Reverence For Fallen Trees』から『I shall Cross This River』。
🖋️僕が大好きな詩人、谷川俊太郎の処女詩集『二十億光年の孤独』から春の詩をひとつ。やわらかな春の陽射しと花の匂いと、僅かな翳りが交差する、素敵な一篇だと思うな。
『春』
かわいらしい郊外電車の沿線には
楽しげに白い家々があった
散歩を誘う小径があった
降りもしない 乗りしない
畠の中の駅
かわいらしい郊外電車の沿線には
しかし
養老院の煙突もみえた
雲の多い三月の空の下
電車は速力をおとす
一瞬の運命論を
僕は梅の匂いにおきかえた
かわいらしい郊外電車の沿線では
春以外は立入禁止である
赤い鳥でキャリアをスタートし、YMOのワールド・ツアーにも参加、数多くのセッションにも参加したギタリストであり、作曲・編曲家でもある大村憲司の、1981年リリースのソロ・アルバム『春がいっぱい』【Spring Is Nearly Here】からタイトル曲を。
レディライク・リリー【Ladylike Lily】の曲『Pearl And Potatoes』。カヴァー・アートも含めて、ウキウキするような春の訪れを感じることができる。

春を感じるピアノ曲を。グランドピアノの弦にゴムや金属、木などを挟んだり乗せたりして、音色を打楽器的な響きに変えて弾くプリペアド・ピアノ【Prepared Piano】によるHasuschkaの曲『kreuzung』。

ヴェティヴァー【Vetiver】のフリー・フォーキーな曲『Stranger Still』。木漏れ日に溢れた森の奥から聞こえてきそうな、そんなイメージの音楽か、と。
Big Thiefの中心メンバー、エイドリアン・レンカー【Adrianne Lenker】のソロ・アルバム『Songs』から 『Two Reverse』。彼女はつくづく才能に溢れたSSWだと思うな
。

ビートルズの歴史的傑作『アビー・ロード』のB面1曲目に置かれたジョージの名曲『Here Comes The Sun』を、ジャズ、ソウル、ゴスペルを自由自在に往き来する偉大なるシンガー、ニーナ・シモン【Nina Simone】のカヴァーで。この曲は意外とカヴァーが多いけど、どうしてもオリジナルを模倣してしまいがち。なので僕はビートルズとはまた全然違った味わいがある、このカヴァーが好き。
最後は。春に始まった恋の歌。サイモン&ガーファンクル【Simon & Garfunkel】の、1966年のアルバム『Sound Of Silence』に収められていた名曲『四月になれは彼女は』【April Come She Will】。四月に始まったその恋は夏が近づくと翳り始め8月にはもう終わってしまう。そして9月になると「かつて新鮮だった恋もやがて古びてしまうんだ」という想いが巡る。季節の移り変わりと共に人の気持ちもまた移り変わっていくという、ちょっぴりせつない曲。だけど、そう。春に始まったひとつの恋が、その年の秋に終わったとしても、誰も何も悪くはない。
春の訪れを静かに感じながら、今夜は素敵な夢を。
それじゃぁ、また
アデュー・ロマンティーク
。
























