第2問(配点40点)
A社の現社長(5代目)の経営改革に関連して、以下の設問に答えよ。
(設問2)
A社では、これまで、学校アルバム事業を中核に据えた機能別組織体制を採用していたが、複数の事業間で全社的に人材の流動性を確保する組織に改変した理由を、100字以内で述べよ。
前回は、機能別組織のデメリットの確認までしました。
では、回答に利用すると思われる段落を抽出します。
9段落
それと同時に、組織改革にも着手した。「営業⇒企画⇒編集⇒印刷⇒製本⇒発送」といった一連の工程を中心に学校アルバム事業に適応するよう編成してきた機能別組織体制を見直し、アルバム事業、一般印刷事業、美術印刷事業、教育関連事業など、複数の事業間に横串を刺すことによって、全社が連動し人材の流動性を確保できるような組織に改変した。
ここの与件文の書き方は非常にわかりづらいです。機能別組織に対して「横串を刺す」ことは成り立たないので、いったん、事業部制組織にしたうえで横串を刺した、と読むのが妥当なので、つまり、マトリクス組織にした、ということでしょう。おそらく、わざと情報を不足させて受験生に混乱を起こさせるつもりの文章でしょう。ここは悩まずにマトリクス組織として捉えましょう。
では、マトリクス組織のメリットをネットから拾いましょう。
・マトリックス組織のメリットは、新たなプロジェクトを始める時に新しく人を採用したり大きな人事異動などをする必要がないことです。また社員が複数の部署に所属する事で部門同士の壁が無くなり、周りの状況と調整しながらの業務がしやすくなります。それにともない会社としての全体像も見えやすくなるので、違う部署でも同じ目標を持って業務を進める意識が醸成されるのも大きなメリットです。部署を超えたメンバーとのコミュニケーションも増えるため、社員同士の関係も密になっていきやすいでしょう。
7段落
さらに、2008年のリーマンショックの余波が、印刷業界を襲った。少子高齢化、価格競争の激化、景気低迷といった逆風の中で、このままでは生き残ることさえ難しいと感じたA社社長は、経営改革を決意した。まず着手したのは、多角化した事業に分散していた経営資源を主力製品であるアルバムに集中し強化することであった。
経営資源が「分散」したから上手くいかなかったということは、多角化した事業ごとに人を貼り付けたため、複数の事業で人材を有効活用できなかった、というとでしょう。
機能別組織のデメリットの視点から考察
機能別組織のまま、事業を多角化したため、権限や利益責任が曖昧になり、事業展開が上手くいかなかったのでしょう。また、多くの事業を立ち上げたため経営資源の中心である人材が分散して強みを構築できなかったのは前問で答えました。だから、マトリクス組織にすることで、流動的に人材を活用できるようにしたのでしょう。
だいたい、回答の方向性がでてきました。
ここで、使えそうな機能別組織のデメリットを再確認します。
・責任が不明確
・変化に弱い
・意思決定に遅れが出る
・組織内の人事交流が不足する
・各部門の利益責任が不明確
三代目が多角化を目指したものの上手くいかなかったのは、機能別組織の弱点と経営資源の不足にあったと考えられます。それを克服するために、マトリクス組織にしたということになるなりますので、機能別組織の弱点を解消できるマトリクス組織のメリットを述べればいいでしょう。字数制限が100字なので、マトリクス組織のメリットを主体に記述します
では、回答です。
理由は、①全社的に人材を流動化することで、各事業の繫閑状況に応じて必要な要員数に適宜調整できるため、②営業担当が複数の事業を担うことで、複数事業を顧客に提案でき、顧客深耕が期待できるため、等である。(100字)
マトリクス組織は組織文化面で、コミュニケーションの活性化や社員同士の関係性の強化などもありますが、与件文にはコンフリクトやコミュニケーション不足は記述されておらず、売上高や収益性が問題点の中心ですので、①人件費の観点、②売上高の観点、から答えました。
以 上
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