終戦宣言、無料はないという米国…「いつでも取り消し」容易にみる韓国
24日にソウルで行われた韓米の北朝鮮核問題首席代表協議の後、米国務省のソン・キム北朝鮮政策特別代表が述べた言葉だ。外交的修辞を除いてみると、北朝鮮を相手に終戦宣言ばかりでなく他の構想もすべきという意味であり、韓国の終戦宣言提案自体を受け入れるかどうかの内容も抜けている。文在寅(ムン・ジェイン)政権が任期末に総力を挙げる終戦宣言に対して米国の立場は事実上まだないとみられる。
◆終戦宣言めぐる韓米の温度差
これは根本的に終戦宣言の「重み」に対する韓米の考え方の違いによる現象だ。「終戦宣言は政治的な宣言にすぎず、いつでも取り消すことができる」(文在寅大統領、2018年9月の米FOXニュースのインタビュー)という韓国政府の立場とは違い、バイデン政権は終戦宣言の実質的な波及力と法的効力を重く受け止める雰囲気だ。
外交筋は「米国は終戦宣言の必要性について『十分に理解する』という基本立場を維持しているが、それと同時に終戦宣言が今後の米朝交渉や北制裁に影響を及ぼす状況を憂慮するのも事実」とし「北を対話テーブルに引き出すための手段として活用するには終戦宣言の拘束力は大きく、意図せぬ副作用を招くおそれがあるという見方がある」と伝えた。米国は韓国政府のいわゆる「終戦宣言入口論」に対して着眼点には共感しながらも、懸念を払拭することはできないということだ。
政府は北朝鮮が米国に向けて敵対視政策の撤回を要求してきた点を挙げながら、終戦宣言がこうした不信感を解消して対話を再開する「呼び水」になる可能性があるとうい点で、米国を集中的に説得している。また、法的・規範的な拘束力がないため米国が大きな負担を感じる必要もないと話す。
◆「対話再開モメンタム」vs「無料はない」
韓国外交部の魯圭悳(ノ・ギュドク)韓半島平和交渉本部長は25日、国家安保戦略研究院「NKフォーラム」の基調発表で、「終戦宣言は敵対視政策がないということを最も象徴的に見せる措置といえる。北側との対話再開の重要なモメンタムになると信じる」という立場をまた強調した。
しかしワシントンの雰囲気は全く違う。ワシントンの代表的な外交情報誌「ネルソンリポート」は22日(現地時間)のリポートで、終戦宣言に対する米国外交・安保専門家の多数の意見を伝えた。
「終戦宣言は無料ではない。米国の拡大抑止および不拡散努力が阻害されかねず、北朝鮮や中国など連合訓練や(韓米同盟の)徹底的な準備態勢に反対する側に口実を与えたり期待を抱かせたりする」「終戦宣言が発効すれば北朝鮮はまず在韓米軍と韓米同盟が終わったと大々的に宣伝するだろう。結局、戦争が『終了』すれば、米軍や同盟がなぜ必要なのか。北朝鮮はこれを楽しむはずだ」という内容だった。
北朝鮮が終戦宣言を宣伝扇動に悪用する可能性が高いとみているのだ。これは韓国政府の主張とは違い、ひとまず米国が北朝鮮と同等な国家対国家として終戦宣言をする場合、事実上協定などと変わらない波及力を持つという問題意識に基づくものだ。
◆「リスク」懸念する米国
実際、外交部当局者も最近、記者らに対し「米国務省の法律家が終戦宣言の全般的な内容について法律的検討をする段階」とし「宣言文に盛り込まれる具体的な表現と文脈がどう解釈されるのか、その解釈がどんな主張につながるかなど詳細な検討が必要というのが米国務省の立場」と伝えた。特に「解釈がどんな主張につながるのか」という点に、北朝鮮が終戦宣言を恣意的に解釈し、これを在韓米軍や国連軍司令部の地位変更要求などに結びつけるという米国側の懸念が表れている。
米国内では、相次ぐミサイル発射と制裁回避などで国連安全保障理事会決議を繰り返し違反する北朝鮮に終戦宣言という「贈り物」を与えてはならないという見方もある。そうでなくとも北朝鮮に使えるカードが制限的という状況で戦争終了に合意した後、北朝鮮が核・ミサイル開発を加速化すれば、北朝鮮の非核化という目標はさらに遠ざかるからだ。
ネルソンリポートも「国連安保理決議を無視する金正恩(キム・ジョンウン)に対し、終戦宣言に集中して手を差し出すことで補償する必要はない」「終戦宣言は『常習的規範違反者(serial cheaters)が規範を繰り返し違反すればより良い取引ができる』という点を示唆する」などの専門家の見解を伝えた。
◆大統領選介入の懸念を呼んだ「政治的宣言にすぎない」主張
こうした米国の懸念を解消するため、終戦宣言は国連軍司令部が管理する停戦協定体制に影響を及ぼさないという内容を明示的に盛り込む案も検討されているという。しかしこれも解釈の領域は依然として存在するうえ、こうした内容は北朝鮮が受け入れない可能性が高い。まだ仮定的な状況だが、米国が受け入れる文案は北朝鮮が拒否し、北朝鮮が受け入れる文案は米国が拒否する根本的なジレンマが存在するという指摘だ。
世宗研究所のウ・ジョンヨプ研究委員は「終戦宣言は戦争終了を宣言するという意味であると同時に、戦争後の領土画定や賠償問題など戦後秩序を法的に整理するための前提条件に該当する」とし「終戦宣言は国連軍司令部および在韓米軍駐留問題などにつながる法的効果を完全に分離するのが難しく、こうした法的効果がないという点を明確に規定する終戦宣言なら『戦争終了』の実質的効果を出すのが難しい」と話した。
さらに終戦宣言がすでに韓国国内的に与野党が対立する政治的イシューになったという点も変数になるとみられる。特にバイデン政権としては終戦宣言の議論が来年3月の韓国大統領選に影響を及ぼす状況を警戒するしかない。
韓米終戦宣言議論に詳しい情報筋は「米国は終戦宣言を支持する場合、与党に対する支持と解釈されるという点をよく知っているため、非常に敏感かつ徹底的な接近をしている」とし「バイデン政権の立場では重要な同盟である韓国の協議要請を拒否できないが、『大統領選介入』として映るリスクを負ってまで積極的に議論をする考えはないようだ」と話した。
