野村とCSが多額損失の可能性、アーケゴスがデフォルトと関係筋
クレディ・スイス(CS)は29日、米拠点のヘッジファンドがマージンコールに応じなかったことを受けて、このファンドのポジション解消を進めており、第1・四半期の業績に影響が及ぶ可能性があると明らかにした。
野村ホールディングスも、米国子会社と取引先との間で多額の損害が発生する可能性を公表した。損害見込み額は精査中。この取引先に対する請求額は、3月26日時点の市場価格に基づく試算で約20億ドルあるという。
ブルームバーグによると、野村HDの米子会社で多額の損失が生じる可能性があるとの発表は、ビル・フアン氏のファミリーオフィス、アーケゴス・キャピタル・マネジメントによる取引巻き戻しに関連しているという。アーケゴスは野村HDのプライムブローカレッジ業務の顧客だったとも報じている。
野村HDの広報担当者は「コメントは差し控える」とした。
26日の米株式市場では、幾つかの銘柄がブロックトレード(大口投資家が証券会社を通じて株式を一度に大量の相対取引で売買すること)の影響で急激に値下がりした。事情に詳しい関係者の話では、アーケゴスによる保有資産売却が、こうした取引に絡んでいるもようだ。
クレディ・スイスは「ポジション解消による損失の正確な規模を見極めるのは時期尚早だが、第1・四半期の業績に大きな影響を与える可能性がある」と説明した。
クレディ・スイスによると、あるファンドが先週、同行と他の金融機関のマージンコールに応じなかった。そのため、同行も含めて複数の金融機関がポジション解消を進めているという。
関係筋は、クレディ・スイスの損失額が最低でも10億ドルに上り、40億ドルまで膨らむ恐れもあると指摘した。クレディ・スイスは見通しについてコメントを控えている。
野村HDの株価は16.3%下落して終了。クレディ・スイスは13.8%急落した。米国市場ではモルガン・スタンレーが約4%安。ゴールドマン・サックスは1.5%安。S&P総合500種指数は0.6%安。
市場関係者は、同社の資産売却が現時点でシステミックリスクに発展する可能性は低いと指摘。ただ、アーケゴスの保有資産売却がすでに完了したのか、これからさらに売りが出るのかを巡って、警戒感が浮上している。
米株式市場でブロックトレードが行われた銘柄は、メディア大手バイアコムや同業ディスカバリー、米上場の中国インターネット企業バイドゥ(百度)、テンセント・ミュージックなど。26日の株価はバイアコムとディスカバリーが前日比でともに約27%下落し、バイドゥとテンセント・ミュージックは23日終値と比べて一時33.5%安、48.5%安となっており、投資家やアナリストは下げが加速した理由の1つとしてブロックトレードを挙げた。
<不安定な値動きに警戒感>
一部の市場参加者によると、これらの銘柄の不安定な値動きを受け、投資家の警戒感が強まっている。
OANDAのシニア市場アナリスト、エドワード・モヤ氏は「正気の沙汰ではない。こうした企業の中には過去数カ月で価格が高騰してきた銘柄があると考えれば、われわれが買い過ぎたのかと心配になるだろう」と述べた。
ただファンドの資産処分があったとしても、市場全般への影響は限られるとの声も聞かれる。実際26日はバイアコムなどの急落にかかわらず、ナスダック総合とS&P総合500種は1%を超える上昇を記録している。
ベアードの市場ストラテジスト、マイケル・アントネッリ氏は「ファンドの持ち高解消を巡る話は時折浮上してくる」と説明した上で、26日にブロックトレードされた銘柄の一部は短期的には乱高下するかもしれないとの見方を示した。
複数の投資銀行がブロックトレードに関わっていたとみられる。関係筋によると、ゴールドマンは26日に3回のブロックトレードを実施。バイドゥとテンセント・ミュージック、唯品会(ビショップ・ホールディングス)の株式66億ドルを売却し、その後、バイアコムCBSを17億ドル、ディスカバリー、ファーフェッチ、中国の愛奇芸(iQiyi)、GSXテクエデュの株式23億ドルを売却した。
また、モルガン・スタンレーは2回のブロックトレードを実施し、それぞれ40億ドルの株式を実施。ゴールドマンの損失は大きくないとみられる。
関係筋によるとドイツ銀行もブロックトレードに関わっていた。ドイツ銀は声明で、損失を出すことなくアルケゴスのエクスポージャーに絡むリスクを大幅に低減した述べた。
米証券取引委員会(SEC)は29日、アーケゴスに関する状況を注視しており、市場参加者と先週末から連絡を取っていると明らかにした。
アーケゴス問題で世界の銀行損失100億ドルも、規制強化が焦点
アーケゴスの資産は約100億ドルとされるにもかかわらず、ヘッジファンド元幹部の「ファミリーオフィス」として運営されているため、規制当局から直接の監視をほとんど受けていなかった。ファミリーオフィスは裕福な家族が資産を管理運用するために設立するという。
JPモルガンのアナリストらは30日、アーケゴス問題で世界の銀行の損失が100億ドルに達する恐れがあるとした上で「業界の通常の巻き戻しシナリオをはるかに超えている」と指摘した。「第1・四半期の業績に大きな影響を与える可能性がある」と表明したクレディ・スイスについては、週内に完全な情報開示が行われると予想した。
アーケゴスは取材に対し「あらゆる計画が議論されている」とする29日の声明を繰り返した。
<規制強化に焦点>
OANDAのシニア市場ストラテジスト、エドワード・モヤ氏は「アーケゴスのマージンコール(証拠金請求)の影響は収まっているもようだが、規制当局の監視を巡る話は当面なくならないだろう」とした上で、「全てのプライムブローカレッジが各自の帳簿をチェックしており、ファミリーオフィスやヘッジファンドに対してレバレッジを下げるよう圧力をかけ始める可能性がある」と述べた。
米、英、日、スイスの金融当局はいずれも状況を注視する姿勢を示している。
関係筋によると、アーケゴスの株式スワップポジションのデフォルトによる影響の大きさを見極めるため、米英の規制当局はブローカー・ディーラーなど市場関係者と協議を行っている。
米証券取引委員会(SEC)と米金融取引業規制機構(FINRA)が金融機関や顧客への影響を把握し、信用リスクを見極めるため業界関係者と会合し、追加のエクスポージャーがないか点検するよう求めたという。
英金融行為監督機構(FCA)も、市場関係者と電話協議したもようだ。
関係筋によると、アーケゴスのブローカーらは25日、アーケゴスのポジション解消による影響をどのように抑えるか話し合った。だが、合意はまとまらず、ゴールドマン・サックスはアーケゴスの同意を得て26日の市場開始前に30億─40億ドル相当の株式を相対で売却するブロックトレードを実行したという。
JPモルガンのアナリストは「規制当局は今回のイベントを注意深く調査するだろう。とりわけ新政権の下で何らかの変更があっても不思議ではない」と述べた。
ウォール街に批判的な民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、ツイッターへの投稿で規制当局の対応について、次のヘッジファンド問題が「経済を道連れにしないよう、透明性と強い監視が求められる」と訴えた。
<金融機関の損失>
クレディ・スイスと野村ホールディングスは29日、多額の損失に直面する可能性を警告しており、アーケゴスが関連しているとみられている。
三菱UFJフィナンシャル・グループも30日、欧州子会社と米顧客との取引で約3億ドルの損害が生じる恐れがあると発表した。当該顧客がアーケゴスかどうかは明らかにしていない。
一方、ウェルズ・ファーゴは、アーケゴスにブローカレッジサービスを提供していたのは事実だが、エクスポージャーの解消に関する損失は出ていないと表明した。
この他の大手銀行は、アーケゴスに関連した多額の損失は見込んでいないとしている。関係筋によると、ゴールドマンとモルガン・スタンレーは26日に素早く株式を売却し、多額の損失を回避したという。
先週から問題が広がっているアルケゴス問題について取り上げてみる!
>クレディ・スイスと野村ホールディングスが多額の損失に直面する可能性を警告した。関係筋によると米ヘッジファンドのアーケゴス・キャピタル・マネジメントが、マージンコールに対してデフォルトを起こした。
投資会社アルケゴスが投資の失敗により、投資銀行や証券会社から追証金の請求を受けるも支払うことが出来ず、デフォルトに・・・
当然、資金を提供していた投資銀行は、アーケゴスから証拠金として預かっていた株式を売却することになるわけだ。
>26日の株価はバイアコムとディスカバリーが前日比でともに約27%下落し、バイドゥとテンセント・ミュージックは23日終値と比べて一時33.5%安、48.5%安となっており、投資家やアナリストは下げが加速した理由の1つとしてブロックトレードを挙げた。
そのため、米市場を中心に株式市場が急落。
クレディ・スイスと野村證券で巨額の損失が出たということだね。
>この他の大手銀行は、アーケゴスに関連した多額の損失は見込んでいないとしている。関係筋によると、ゴールドマンとモルガン・スタンレーは26日に素早く株式を売却し、多額の損失を回避したという。
なるほど!
その他の投資会社はいち早く株を売却し損失を回避するも、クレディと野村は逃げ遅れたということなんだね。
こうなると、両社に融資していた金融機関にまで影響だ出かねず、下手をすると100億ドルの損失になるかもしれないらしい。
そのまま、信用不安が拡大すると金融危機に陥るというのは過去にリーマンショックなどで何度か経験済み。
今回はそこまでは行かなそうなので一安心!
>アーケゴスの資産は約100億ドルとされるにもかかわらず、ヘッジファンド元幹部の「ファミリーオフィス」として運営されているため、規制当局から直接の監視をほとんど受けていなかった。ファミリーオフィスは裕福な家族が資産を管理運用するために設立するという。
ちなみに、アルケゴスは裕福な家族が資産運用のために設立したもののため、規制を受けていないらしい。
この辺が今後規制の対象になりそうだね。