サウジ失踪記者、トランプ氏「死亡の公算大」 トルコでの捜査続く
[ワシントン/イスタンブール 18日 ロイター] - トランプ米大統領は18日、トルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館訪問後に行方不明になったサウジの反体制記者ジャマル・カショギ氏について、すでに死亡しているとの見方を示した。米国はサウジに「非常に厳しい」対応を取る見通しだとした上で、実際に何が起きたかの真相を依然として探りたい意向を示した。
イスタンブールではトルコ捜査当局が真相の手掛かりを得ようと、サウジ総領事館で2度目の家宅捜索を行った。
トランプ氏はカショギ氏が死亡した可能性を初めて認めた。
カショギ氏は死亡しているのかとの記者の質問に、「私には確かにそう見える」とし、「非常に悲しいことだ」と述べた。
トランプ氏は、ポンペオ国務長官からサウジとトルコでの緊急会談の結果報告を受けた後に語った。
同氏はまた、真相解明に向け、3件の異なる捜査の結果を待っていると語った。
サウジの国王や皇太子らがカショギ氏失踪に関与していた場合、どのような結果になるかとの質問に対しては、「厳しい結果を伴う」と答えた。
また、米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューでは、カショギ氏殺害にサウジ当局の上層部が関与していたという情報当局の報告書を信頼しているしてるとしつつも、誰が殺害を指図したかを特定するのは依然として「やや時期尚早」との見方を示した。
ポンペオ長官はトランプ氏との会談後、記者団に対し、サウジがカショギ氏失踪に関する調査を完了できるよう、米国はサウジにあと数日の時間を与えるべきとの考えをトランプ氏に提言したことを明らかにした。
「われわれは、サウジとの1932年以降の長期にわたる戦略的な関係に留意することも重要だ」と指摘。サウジについて「テロ対策の重要なパートナー」でもあるとの認識を示した。
トランプ氏は「真相を早期に解明できるよう」捜査結果を待っているとし、ある時点でこの件に関する声明を発表する方針を示した。
米政府関係筋によると、米情報当局はカショギ氏の死亡につながったとみられる取り調べにサウジの皇太子が関与したとの確信を強めている。
こうした中、ムニューシン財務長官は、サウジで来週開催される経済投資フォーラム「砂漠のダボス会議」への参加を取りやめる意向を表明した。
トルコのサウジ領事館内での反体制記者死亡事件。
国際的に波紋が広がってきたようなので取り上げておく。
>米国はサウジに「非常に厳しい」対応を取る見通しだとした上で、実際に何が起きたかの真相を依然として探りたい意向を示した。
トランプくんが、サウジに対して厳しい対応を取る見通しだと表明。
>ムニューシン財務長官は、サウジで来週開催される経済投資フォーラム「砂漠のダボス会議」への参加を取りやめる意向を表明した。
ムニューシンくんもサウジで開催される国際会議への参加を取りやめたことで、投資家の間でも懸念が広がっているみたいです。
>米情報当局はカショギ氏の死亡につながったとみられる取り調べにサウジの皇太子が関与したとの確信を強めている。
なるほど、米国はサウジのムハンマド皇太子が関与していると見ているようだね。
サウジ皇太子、不明記者問題で「失脚」の現実味

[16日 ロイター] - サウジアラビア、そして特に世間知らずで打算的、残虐ともいわれる同国の若きプリンスは、反体制派のジャマル・カショギ記者が消息を絶った事件に対する世間の反応を見誤ったようだ。
同記者は、サウジの王位継承者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子が野放図に、自国と中東全体を自らのビジョンに基づいて再構築しようとしていることに反対していた。
33歳のムハンマド皇太子は、1年4カ月前に父サルマン国王の後継者として選ばれてから、相当うまく切り抜けてきた。女性の自動車運転解禁などの措置により改革主義者と称賛される一方で、詳細不明な「違反」を巡る金銭的解決に合意するまでリッツ・カールトン・ホテルに大勢の王族メンバーや企業経営者を拘束した。
また、数多くの人権活動家や女性の権利を擁護する活動家を逮捕・監禁したり、隣国イエメンの内戦に介入し続けている。人権や戦場における国際ルールが日常的に無視されているイエメン内戦では、少なくとも1万人の市民が犠牲となり、約200万人が家を追われている。
さらに、隣国カタールに対して経済封鎖を行って孤立させた。総額1100億ドル(約12兆円)に及ぶ米国から武器を購入するとの約束もまだ果たしてない。
サウジは現在、カショギ記者に対する行動に関し、ムハンマド皇太子に非はないと認めているかのようだ。皇太子がこれまでずっと、絶対的権力、とりわけ安全保障問題における権力をほぼ手中に収めてきたにもかかわらずだ。
同時に、皇太子はトランプ米大統領とその娘婿のクシュナー大統領上級顧問の力を大いに見誤った可能性がある。米議会を超えてサウジアラビアの権益を守るため、皇太子は2人に熱心に近づいた。
サウジ政府が人権の尊重で知られたことはこれまで一度もなかった。とはいえ、今回のように歯止めの利かないやり方で行うことは通常はなかった。
では、何が変わってしまったのか。
その一因として、力ずくで権力を得ようとする新世代の指導者たちの存在が挙げられる。だが、こうした新顔のリーダーシップが、これまでの王族による現状打破よりその維持を狙ったゴールに向け緩やかに進化する比較的信頼の厚い旧来スタイルへと回帰するかを予想するのは時期尚早かもしれない。ムハンマド皇太子が権力を掌握するには、まだ単に準備が整っていないように見える。
歴代サウジ国王の大半は、建国の父である初代アブドルアジズ国王の子どもたちによって継承され、ようやく60歳代になって王位に就くことが多い。
28人の皇太子で構成され、国王を正式に選出する「忠誠委員会」に属する年配の皇太子は、首都リヤドを訪れた筆者に対し、同委員会は次期国王には、さまざまな試練に打ち勝ち、年齢を重ねることによって得られる英知と気質を備えた人物を望んでいると語った。
頭角を現したばかりのムハンマド皇太子は、このような英知を全くと言っていいほど兼ね備えていない。
問題は、ムハンマド皇太子以上に根深い。皇太子が権力の座に就くためのプロセスこそが問題の核心なのだ。ムハンマド皇太子が国王のお気に入りであっても、忠誠委員会が彼を承認しない限り後継者としての立場は磐石とは言えない。
ムハンマド皇太子は、大勢いる初代国王の孫たちの大半を飛び越えてきた。しかし、ずっと年配者が牛耳ってきた権力の牙城を壊してサウジ王位を継承するという同皇太子の計画にとって、カショギ記者の失踪問題が命取りになるかもしれない。実際、解決策を求めてトルコのエルドアン大統領に電話したのは父親のサルマン国王(82)だった。
今回の記者失踪事件において、現時点でほぼ無視されている核心的な問題は、サウジが他国との共同歩調に戻るのか、それとも真の「のけ者国家」へと向かうのか、ということだ。
ムハンマド皇太子はすでに、自身の目的達成に中心的役割を担うはずだった主な同調者や支持者の一部を失った。23日からリヤドで開催される自慢の経済フォーラム「砂漠のダボス会議」は、自身の改革「ビジョン2030」に乗り出す上で主要な役割を担うはずだった。
しかし、カショギ記者が行方不明になってから数日たっても事件の真相究明に腰の重いサウジに対し、同会議の主要スポンサーや企業経営者からの撤退が相次ぎ、会議自体が宙に浮いている。
ムハンマド皇太子が、サウジの改革や国を率いるための課題に立ち向かうことができる人物かどうかについては、ますます疑わしくなっている。実際のところ、同皇太子が単独支配するわけでも、ライバルがいないわけでもない。王族幹部の支持を勝ち取って真の後継者となるには、プロセスが存在し、カショギ問題で同皇太子が越えてしまったかもしれない「レッドライン(越えてはならない一線)」がある。
最も肝要なのは、皇太子自身やサウジに不利な関心をあまり向けさせないようにすることだ。同国はまさに文字通り、西側主要国、特に米国の主な機関への寄付だけでなく、ロビイストやイメージコンサルタント会社に巨額のカネをつぎ込んできた。その狙いは、こうしたイメージを決して修復不可能なほど色あせないようにすることだ。
サウジは当面、ムハンマド皇太子という個人と一蓮托生のようだ。だが、皇太子の注意深くつくられたイメージは今にも崩れようとしている。
トランプ大統領は、いまだにサウジ王族から歓迎を受け、クシュナー氏も何時間にも及ぶ電話や面会によってムハンマド皇太子との個人的関係を強固なものにしている。
それでも結局、米国の中東政策においてムハンマド皇太子が中心でいられるかどうかは依然として疑わしいのである。
ムハンマド皇太子については、これまでも何度か取り上げてきました。
33歳という若さで急進的改革派であり、権力を握るためには人権を無視することもいとわず、イエメン内戦への積極的介入やカタール断交も主導する独裁的な人だと思っていたので、今回の事件に関与していたとしても驚きませんね。
詳しくはコチラ⇒ムハンマド皇太子、汚職摘発&権力集中へ 2017/11/08
サウジ、ムハンマド副皇太子が皇太子に昇格 2017/06/23
トランプくんと関係も良好とされてましたから、今後の展開が注目になりそうです。