原発事故被ばくを考察 PART29 実効線量係数を加味してね | 晴走雨読

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トリチウムの生物影響 (09-02-02-20)

<概要>
将来のエネルギー源として計画が進められている核融合(炉)にかかわる環境・生物影響、とくにトリチウムの人体への影響が注目される。トリチウムはトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され人体にはきわめて吸収されやすい。また、有機結合型トリチウム(OBT)はトリチウムとは異なった挙動をとることが知られている。動物実験で造血組織を中心に障害を生ずることが明らかにされ、ヒトが長期間摂取した重大事故も発生している。
<更新年月>
2000年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
トリチウムは水素の同位体で、最大エネルギー18.6keVで平均エネルギー5.7keVという非常に低いエネルギーのβ線を放出し物理的半減期は12年である。大気上層中で宇宙線中の中性子と窒素原子核との衝突によって生成する天然トリチウムが自然界の水循環系に取り組まれているとともに、核実験や原子力施設などから主としてトリチウム水(HTO)の形で環境に放出され、生物体へは比較的簡単に取り込まれる。ヒトの体重の60~70%は水分で、個人差はあるが、女性よりも男性、老人よりも若者、太った人よりも痩せた人の方が含水量が多い傾向にある。表1は国際放射線防護委員会(ICRP)がトリチウムの被ばく線量計算のために水分含有量を推定したもので、“体重70kgのヒトの60%(42kg)が水分である”と仮定している。このうちの56%は細胞内液、20%は間質リンパ球、7%が血しょう中に、残りは細胞外液として存在するものとしている。飲料水や食物から摂取されたトリチウム水は胃腸管からほぼ完全に吸収される。トリチウム水蒸気を含む空気を呼吸することによって肺に取り込まれ、そのほとんどは血液中に入る。血中のトリチウムは細胞に移行し、24時間以内に体液中にほぼ均等に分布する。また、トリチウムは皮膚からも吸収される。最近問題になっているのは有機成分として取り込まれた場合の有機結合型のトリチウム(OBT:Organically Bound Tritium)で、一般に排泄が遅く、体内に長く留まる傾向がある。トリチウムは水素と同じ化学的性質を持つため生物体内での主要な化合物である蛋白質、糖、脂肪などの有機物にも結合する。経口摂取したトリチウム水の生物学的半減期が約10日であるのに対し、有機結合型トリチウムのそれは約30日~45日滞留するとされている。
トリチウムのβ線による外部被ばくの影響は無視できるが、ヒトに障害が起きるのはトリチウムを体内に取り込んだ場合である。ヒトの場合にはこのような事故例は少ないので、主として動物実験から被ばく量と障害の関係が推定されている。
放射線の生物学的効果を表す指標をRBE(Relative Biological Effectiveness,生物学的効果比)というが、いろいろな生物学的指標についてのトリチウムβ線のRBEは表2のように示される。基準放射線をγ線とした場合のRBEは1を超える報告が多い。
血球には赤血球、白血球(好中球、単球、マクロファージ、好酸球、リンパ球など)、血小板がある。これらはすべて骨髄の造血細胞から作られ、それぞれ機能が異なる。ヒトの末梢血液をin vitro(生体外)で照射してTリンパの急性障害をしらべた結果、トリチウムの細胞致死効果はγ線より高く、また放射線感受性はいずれの血液細胞もマウスよりヒトの方が高いことが明らかにされている。
トリチウム被ばくの場合、幹細胞レベルでは変化があっても通常の血液像の変化は小さい。したがって急性障害のモニタリングには幹細胞チェックが重要である。
トリチウム水を一時に多量摂取することは現実的にはあり得ないが、低濃度のトリチウム水による長期間被ばくの場合を考えねばならない。
実際に、トリチウムをヒトが長期間摂取した被ばく事故例が1960年代にヨーロッパで起きている。トリチウムは夜光剤として夜光時計の文字盤に使用されているが、これを製造する二つの施設で事故が発生している。一つは、トリチウムを7.4年にわたって被ばくした例で280テラベクレル(TBq)のトリチウムと接触し、相当量のトリチウムを体内に取り込んだ事例である。尿中のトリチウム量から被ばく線量は3~6Svと推定されている。症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症が原因で死亡している(表3)。
もう一つの例も似たような症状の経過をたどり汎血球減少症が原因で死亡している。臓器中のトリチウム量が体液中よりも6~12倍も高く、体内でトリチウムが有機結合型として存在しているものと推定されている。
発電所および核燃料再処理施設の稼働によりトリチウムも放出されるが、ブルックヘブン・トリチウム毒性プログラムは低濃度トリチウム水に長期間被ばくする場合の健康影響について示唆を与えてくれる(表4)。
夜光剤を扱う施設ではラジウムペインターの骨肉腫がよく知られているが、トリチウムの場合はラジウムの場合と明らかに異なることは注目される。
トリチウムによる発がんに関する報告は多くはないが、X線やγ線との比較によるRBEが求められている(表5)。これらは動物での発がん実験や培養細胞がん化実験の結果で、トリチウムRBEは1~2の範囲である。
このほか、遺伝的影響を調べるために染色体異常の誘発、DNA損傷と修復などの細胞生物学的研究や、発生時期、すなわち胞子発生期、器官形成期、胎児期あるいは器官形成期における放射線感受性の研究も行われている。

http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-02-20

前回の記事 『原発事故被ばくを考察 PART28 トリチウムの謎』の続き・・・
http://blogs.yahoo.co.jp/x_men_go_go/33101988.html

関西系のニュース番組「アンカー」で、青山さんがオイラの分析と同じような事を言っていたらしい。

オイラは、関東在住なのでその番組は見ていないのだが、ネット内でのと反応して、上記の記事を引用して青山さんの言っていることは間違っているという意見があるらしい・・・

そこで、オイラなりに上記の記事を分析してみる!

ちなみに、一般財団法人高度情報科学技術研究機構というところが発表している。

文科省の委託を受けている半公的な組織らしく、記事の内容はとても論理的で素晴らしいですね。

>ヒトの末梢血液をin vitro(生体外)で照射してTリンパの急性障害をしらべた結果、トリチウムの細胞致死効果はγ線より高く、また放射線感受性はいずれの血液細胞もマウスよりヒトの方が高いことが明らかにされている。

>実際に、トリチウムをヒトが長期間摂取した被ばく事故例が1960年代にヨーロッパで起きている。

その中で、この二つの文章を抽出して、トリチウムによる被ばくは危険じゃないか!というのがネットの主張なのだが。

まず、Tリンパという細胞1個に対する放射線感受性はベータ線のほうがガンマ線より高いのは当たり前。

>トリチウム被ばくの場合、幹細胞レベルでは変化があっても通常の血液像の変化は小さい。したがって急性障害のモニタリングには幹細胞チェックが重要である。

しかし、莫大な細胞が集まった血液の中では微々たる変化でしかなく、だから問題ないというのが結論なのだ。

ただし、急性障害(一度に大量に被ばくしたとき)にはモニタリングが必要と言っているだけで、今回のような低線量のトリチウム汚染水では明らかに起こり得ない状況だと理解して欲しい。

>トリチウムを7.4年にわたって被ばくした例で280テラベクレル(TBq)のトリチウムと接触し、相当量のトリチウムを体内に取り込んだ事例である。尿中のトリチウム量から被ばく線量は3~6Svと推定されている

トリチウム被ばくの症例を挙げているが、7年半で280TBq(=280×1012Bq)ということは・・・

1年間に38TBqということになる。

仮に、このトリチウムを体内に取り込むとすると・・・

=38×1012Bq×11.8×10-8mSv/Bq (11.8×10-8mSv/Bqは実効線量係数)

=448.4×10mSv

=4484Sv/y

恐ろしい!!

前回、汚染水の1年間の被ばく量は0.8mSv/yと分析したが、それの4000倍以上!

もし、この被ばくなら即死レベル・・・

とんでもない状況下で仕事してたんですな・・・

>尿中のトリチウム量から被ばく線量は3~6Svと推定されている。

実際は、3~6Svぐらいの内部被ばくと推定しているようだが・・・

仮に7年半で3Svの被ばくとしたら・・・

1年間の被ばく量は0.4Sv=400mSv

それでも、汚染水の500倍なんですが・・・

要するに、今回の汚染水を1年間毎日500Lずつ飲み続けたら、

>症状としては全身倦怠、悪心、その後白血球減少、血小板減少が起こり、汎血球減少症が原因で死亡している

このような症状が出て死亡する可能性もあるということだね。

>臓器中のトリチウム量が体液中よりも6~12倍も高く、体内でトリチウムが有機結合型として存在しているものと推定されている。

有機結合型がどうのこうのと言ってますが・・・

このような実験データも加味して、実効線量係数というものは決定されてます!

実効線量係数というのは放射性物質によって異なるもので、各物質1Bqを体内に取り込んだ場合の被ばく線量を計算しており、様々な研究を元に計算してますので。

青山さんがどのような事言ったか知りませんが、現状のトリチウム汚染水は全く人体に無害なのは確かですね。