朴大統領「韓国は優れた創造DNAを持つ民族」
キム・チェラン氏(世界女性発明大会金賞受賞者)=玄関のドアにストッパー機能が内蔵されていて、ドンと強く閉まることはなく、音も出ません。
朴槿恵(パク・クネ)大統領=本当にすばらしい。これがどのようにして商品化されるのですか。
キム・チェラン氏=建設会社に納品しなければいけませんが、初めて開発したものなので、まだ知られていません。しかし世界的にないものなので一度挑戦してみようと思います。
朴槿恵大統領=唯一のアイテムですね。おめでとう。政府がすることは、こういうものをどのように市場に出すか、はしごをかけて後押しする…。
15日の第48回「発明の日」記念式で、朴槿恵大統領が発明家と交わした言葉だ。朴大統領は展示場で一つひとつ発明品を試しながら、発明家と対話をして激励した。
現職大統領が発明の日の記念式に出席したのは、盧武鉉(ノ・ムヒョン)前大統領の就任新年の2003年以来10年ぶりとなる。行事には鄭ホン原(チョン・ホンウォン)国務総理が出席する予定だったが、特許庁が朴大統領の出席を建議し、これを受け入れた。朴大統領は韓国初の理工系(西江大電子工学科)出身の大統領だ。
行事場所には「創造経済に向かって新たな挑戦、発明人がリードする」という文字が見えた。朴大統領は祝辞で「創造経済」と「発明」の結合を強調した。「知識財産が創造経済のエネルギーなら、発明はそのエネルギーをつくる基礎動力」と述べながらだ。
朴大統領は「私は韓国経済が進む新しい発展パラダイムに創造経済を提示している。創造経済の主人公はまさに発明人と研究者の皆さんだ」と強調した。続いて「私たちは優れた“創造DNA”を持った民族。韓国は世界で最も短い期間に100万号特許登録を実現し、特許出願世界4位の知識財産強国に飛躍した。私はその創意の力と情熱を生かして第2の漢江(ハンガン)の奇跡を必ず実現する」と語った。
このために朴大統領は「技術とアイデアの融合・複合と革新を妨げる各種規制から果敢に緩和する」とし「私と政府は創造の意欲と革新の意志がきちんと保護され、花を咲かせられるように、最適の環境をつくっていく」と述べた。
青瓦台の趙源東(チョ・ウォンドン)経済首席は「創造経済をつくる主体は民間であり、政府はその基盤を築く役割をする。今後、研究開発(R&D)を創造経済につなぐ対策がずっと出てくるだろう」と説明した。
>「私たちは優れた“創造DNA”を持った民族。韓国は世界で最も短い期間に100万号特許登録を実現し、特許出願世界4位の知識財産強国に飛躍した。私はその創意の力と情熱を生かして第2の漢江(ハンガン)の奇跡を必ず実現する」
韓国政府の経済チーム、「創造経済」を探して道に迷う
次の共通点は何だろうか。(1)運動量と熱量を知らせる運動靴(2)植物をベランダで育てる時に決まった時間になると水を与える科学技術が結びついた装置(3)科学技術を利用して上階の騒音を減らす方法(4)外部温度により色が変わる花の海外輸出(5)ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズのように創造力が豊富な融合型人材(6)PSYの『ジェントルマン』。
正解は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が言及した「創造経済」の例だ。このように具体的な例示をしたにもかかわらずまだ「創造経済」が何かよくわからないならば朴大統領が直接明らかにした「創造経済」の定義を挙げてみよう。朴大統領によると「創造経済とは果敢なパラダイム転換で創意性を経済の核心価値に置き、科学技術と情報通信技術(ICT)の融合を通じて産業と産業が融合し、産業と文化が融合して新しい付加価値を創り出し、新しい雇用を作り出すこと」だ。これで創造経済がなにか理解できただろうか。たぶんそうではないだろう。JTBCのトークショー「舌戦」の進行者は「最近まったくわからない3種類がある。それは朴槿恵の創造経済、安哲秀(アン・チョルス)の新しい政治、金正恩(キム・ジョンウン)の考え」と話した。
そのためか創造経済の実体を糾明しようとする努力はその後も政府内で絶えず続いている。ついに首相傘下の経済人文社会研究会は22日に各界の「創造経済」専門家らを呼び、第1次創造経済総合討論会を開いたりした。しかしここでも創造経済の神秘な姿は明確に現われなかった。討論会に参加したある教授は、「創造経済の概念はそれほど大層ではない。いわゆる“SKY大学”(ソウル大学、高麗大学、延世大学の3大学)を出なくても金を稼げる経済、創業して失敗しても路頭に迷わない経済、大企業の足を引っ張らない経済、スティーブ・ジョブズでなくても大ヒットを出す経済、失敗が創造の元手になる経済が創造経済だ」と説明した(東亜日報4月23日付B4面)。このように説明しても概念が捕えられないのか他の参席者は「創造経済を規定すること自体が非創造的」とし、「創造経済の概念を議論することより、創造経済という目的を実現する手段を議論する時だ」と話した。創造が何かよくわからないがひとまずやってみようということだ。討論会が第1次であるのを見ると創造経済糾明に向けた汎政府レベルの討論は今後も続くようだ。
ところで全国が創造経済を探しさまよう間に新たに創造しようとする経済はしきりに転んでばかりいる気の毒な境遇だ。円安の空襲に輸出企業が悲鳴を上げ、経済成長率見通しはますます暗くなっている。企業はお金を貯め込んだまま投資をせず、消費者は財布を開かない。輸出と内需(投資と消費)が止まれば経済成長が止まり、成長が止まれば雇用が減る。しかし朴槿恵政権の経済チームは黙して答えず、これといった対策を出していない。事実、対策をまったく出さないのではない。景気を回復させるとして追加補正予算案を提示したし、不動産景気活性化対策も発表した。しかしこのような個別措置がどのような関連性を持ち、効果はどの程度かに対する説明はない。この程度で経済を回復できるということなのか、回復するならば経済がどの程度良くなるのかまったくわからない。韓国経済全般の不振を払いのけ状況を反転させるほどの画期的で総合的なビジョンがないのだ。まるで総論はなく各論だけ散発的に出す格好だ。
経済全般に対する下絵がないので個別の政策の優先順位がよじれ、甚だしくは互いに衝突までする。一方では企業の投資を増やすために規制を果敢に緩和するとしながら、もう一方では経済民主化の後退はないとして規制を強化する。中小企業を積極支援すると言いながら、同時に税収確保のため企業に負担を与えることが明らかな税務調査を拡大するという。すでに編成された支出予算は大幅に減らすとしながら公約事項である追加的な福祉支出は支障なく履行するという。経済チームは大統領の一言が出てくるたびに「経済民主化」と「景気活性化」の間を行ったり来たりする。
すべての政策にはそれなりの根拠と必要性がある。景気活性化も必要で経済民主化に対する要求があるのも事実だ。中小企業を支援して福祉を増やすのはそれ自体で良いことであり正しい方向だ。問題はこれらを一度にすべてやることはできず、そうしてはならないということだ。財源の限界と緊急性の程度、政策の関連性と効果などを考えて施行するかどうかと優先順位を付けなければならない理由だ。それがすぐに政府がしなければならないことだ。意味があって良い政策だからと無条件ですべてやっていては経済がごちゃまぜになりこんがらがり財政だけが底をつく。経済学に「合成の誤謬」(fallacy of composition)というものがある。個別的にはすべて合理的で正しい経済行為が、すべてを合わせてみると経済全体に否定的な結果を生みかねないという話だ。総論ななく各論だけ乱舞すれば「合成の誤謬」に陥る公算が大きい。
現在の経済チームは大統領選挙過程に寄与した部分がない官僚出身で組まれた。すでに構成された政府組織の枠組みに割り込んだため経済に対する新たな構想をしてみる余地もなくて言葉に影響力もない。みんなが大統領の口ばかり眺める。大統領が「公約の完全履行」と話せばそのまま復唱し、「創造経済」を強調すればその意味を解釈するのに忙しい。経済に総論がなく散発的な各論だけ見える理由だ。こうしている間に韓国経済はますます沈滞の沼にはまっていっている。
>「創造経済を規定すること自体が非創造的」とし、「創造経済の概念を議論することより、創造経済という目的を実現する手段を議論する時だ」