LIBOR操作「思ったより簡単」-研究者やトレーダー
7月16日(ブルームバーグ):ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)はそもそも設定方法に欠陥があり、これによって個々の銀行は自行の利益のために何年にもわたって金利操作ができた。トレーダーらが明らかにした。
金利操作を試みたとして失職した1人を含むトレーダーらの話によると、LIBORの日々の設定に影響を与えるのに、銀行従業員は他行と共謀する必要はなく、これについては一部の監督当局者もそのような結論に至った。当局による調査が続いているとして匿名で語った関係者によると、自行が申告するLIBORの水準をちょっと上げ下げするだけで、取引の価値押し上げや損失カットができたという。
銀行1行だけでLIBORを操作できる能力は英銀バークレイズが公表した電子メールのほか、学術研究でも浮き彫りになった。同行はLIBOR操作を認め、英米当局から計2億9000万ポンド(約360億円)の制裁金を科されたほか、ロバート・ダイアモンド最高経営責任者(CEO)が辞任に追い込まれた。
米エール大学法科大学院の講師、アンドルー・バースタイン氏は「LIBOR操作は思ったよりずっと簡単だ」と、規制に関する同大ジャーナルの2013年冬季号に掲載される論文で「共謀の必要はない」と指摘する。
英国銀行協会(BBA)が公表するLIBORは、それぞれの銀行が申告する金利水準から一部を除き、残った平均を算出する。例えば、ドル建てLIBORでは、16行が申請。低めの4行と高め4行の金利を除く残り8行の平均がLIBORとなる。BBAのウェブサイトによれば、上位と下位それぞれ4分の1が申告した金利を除くことで、最終算出される水準に銀行1行が影響を及ぼすのは「あり得ない」としている。
しかしバースタイン氏の論文は、それが可能であることを示唆する。同氏はインタビューで、例えば銀行8行の申告を基にLIBORのような金利を設定する例を挙げる。申告された1カ月物金利は0.18%、0.20%、0.22%、0.23%、0.23%、0.25%、0.26%、0.27%だ。
ここで、1番目と2番目に低い金利と最高そして2番目に高い金利を除く4行(0.22%、0.23%、0.23%、0.25%)の平均を算出すると0.2325%。しかし3番目に低い0.22%を申告した銀行が翌日に金利を0.19%まで下げ、他行がそのままの水準であれば、前日に算出対象から除かれた0.20%が今度は平均金利の構成対象となり、最終金利は0.2275%と0.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下する。逆に、最低の0.18%を申告していた銀行が5bp高くすれば平均の算出対象に入り、最終金利を0.2350%へと0.75bp押し上げることになるという。