アイルランド総選挙で野党が勝利―EUと金融支援で再交渉へ
25日投票が行われたアイルランドの総選挙(下院選、166議席)は、中道右派の最大野党・統一アイルランド党が政権を奪取し、アイルランドの新政権は同国向け国際金融支援の条件をめぐる再交渉で欧州連合(EU)と激突することになりそうだ。
27日夕までに150議席が決まり、統一アイルランド党がこのうち68議席を占め、第一党に躍進した。次いで労働党が35議席で、与党・共和党は17議席にとどまり惨敗を喫した。左派のシン・フェイン党と無所属が13議席となっている。
この結果、統一アイルランド党は労働党と連立政権を組み、選挙公約に従ってEUとの間で675億ユーロ(約7兆6200億円)に上る国際金融支援の条件変更について交渉に臨むことになる。
新政権の首相に就任することが確実視されているエンダ・ケニー統一アイルランド党党首は27日、国際金融支援について「アイルランドにとってもEUにとっても好ましいものではない」と、見直しの必要性を強調した。同党首は、3月4日にヘルシンキで開かれる欧州各国の右派・キリスト教民主党の指導者の集まりで再交渉を呼び掛け、翌週にブリュッセルで開かれる欧州理事会で仕切り直しを要求する。
統一アイルランド党は、同国経済の破綻と大規模な債務の発生に対する国民の怒りを追い風に政権の座に就き、共和党は同国の銀行の野放図な不動産融資を抑えることができなかった責任を負う形になった。
統一アイルランド党幹部は、国際金融支援の金利6%の引き下げを求めるだけでなく、同国銀行の社債保有者に対しても損失負担を要求する構えをみせている。ダブリン・シティー大学のケビン・ラフター政治学講師は、「アイルランドの納税者が同国の金融システムの救済負担をすべてかぶるわけにはいかないという意見がアイルランド国内には強い」と指摘し、「欧州レベルで負担を分かち合う必要があるというのがコンセンサスだ」と述べる。
しかし、EUならびに欧州中央銀行(ECB)の当局者は、アイルランドの銀行の社債保有者にヘアカット(債務減免)を強いることには強く反対している。これら当局者は、債務の減免を行えば、ユーロ圏に対する投資家の信頼を揺るがせ、欧州の銀行危機が再燃する恐れがあると懸念している。また、債務の減免を行えば、アイルランドの銀行の社債を大量に保有している独仏の銀行が大規模な損失を被る恐れもある。
新政府がまず決めなければならない課題の一つに銀行の資本増強がある。救済策には2月末までに政府がバンク・オブ・アイルランド、アライド・アイリッシュ銀行、EBSビルディング・ソサイエティの3行に100億ユーロを上限とする公的資金を注入することが盛り込まれている。ただし、ケニー氏は、この資本注入について、3月末までに実施される銀行のストレステストの結果がわかるまで延期されるべきだとしている。
>統一アイルランド党幹部は、国際金融支援の金利6%の引き下げを求めるだけでなく、同国銀行の社債保有者に対しても損失負担を要求する構えをみせている。
>「アイルランドの納税者が同国の金融システムの救済負担をすべてかぶるわけにはいかないという意見がアイルランド国内には強い」と指摘