↑展望グリーン車クロ380を連結したスーパーくろしお号。2011年12月。

JR発足当初の特急列車のトレンドとして、前面眺望がある。窓を大きくし、これまで中間に連結することが多かったグリーン車を先頭にしてその眺望を売りにした。
既存車両の381系をパノラマ型に先頭車改造したクロ380がきのくに線でも走り始めた。1989年7月22日からというからバブルの時期である。クロ481よりは直線的なデザインとなっている。

もうひとつの特徴として、列車名にスーパーを冠して停車駅を少なくした速達列車を設定したことだろう。きのくに線でも基本的にクロ380の編成がスーパーくろしおに充当され、主に新宮までのロングランに使用された。この区間は海沿いを走ることが多く、前面眺望と振り子による効果は大きかったようだ。
少し目が回りそうであるが。

    ↑前面眺望、振り子を兼ね合わせた新車283系オーシャンアローが投入された。2011年3月撮影。

そのスーパーくろしおに新車が加わった。1996年に登場した283系である。オーシャンアローという名称が付き、翌年にはそれが列車名となった。
きのくに線らしい流線型であるが、増結の関係で貫通型の先頭車もある。
一方、こちらの381系は前面非貫通であるので、スーパーくろしお用増結モハ380は小窓が付いたボードで貫通路が塞がれていた。
381系スーパーくろしおと283系オーシャンアローは運用は分けられ、とりわけ283系は長距離運用が際立っていた。


    ↑くろしおに活躍する381系。主に非パノラマの編成が使用された。2011年9月。

主に白浜以北の停車駅の多い「くろしお」には381系の非パノラマ編成が充当されるケースが多かった。
このように、きのくに線特急には3種類の名称が存在し、それぞれの編成が基本的に充当された。
「基本的」ということは例外も存在するわけであり、むしろ「くろしお」に統一してしまったほうが何かと良さそうなので、2012年3月17日にそのようになったそうである。

    ↑くろしおに統一後のクロ380の編成。2013年4月撮影。

しかし、車両のほうは287系の増備が進み、転用改造されてきた289系も加わり、381系は引退した。
くろしおに統一されているが、283系はオーシャンアロー編成と時刻表からも判別できるのである。ワイドな前面眺望の特急列車もしだいに稀少になってゆくようだ。

*参考
「JR電車編成表」各号
Wikipedia くろしお(列車)