「帰ってきたウルトラマン」のような外装の神戸電鉄の4両編成の電車が一生懸命、上り勾配に挑んでいる。
登山電車の様相であるが、車内は普通の人々である。4両でも車掌はいない。無人駅でも自動券売機と自動改札機を備えておけば、客がセルフでやってくれる。運転士は運転とドアの開閉、車内放送とやや忙しいが。

その車内放送もバスみたいに広告が入る。クリニックが多く、志染には胃腸、肛門科があって日曜日もやってますよ!という。嬉しいサービスだ。
毎日、毎日、便器が割れるほどのウンコを出しているので、クリニックはいいかな?と思う。もっとも量を出せばいいというものでもないが。

これだけ山に登っているのだからログハウスとかが出てくるかと思うけれど、逆に都会っぽくなってくるのが神鉄の不思議な所。ベットタウンといった感じで、なるほどクリニックがこぞって広告を出すのもうなずける。
しかし、どことなく晩秋の愁いのような空気が漂っているのがミナト神戸とは異なる。

早くも黄昏が迫ってきた。
志染の手前、広野ゴルフ場前に降り立ったのは新と旧が融合した空気に触れてみたかったから。一緒に降り立った女子高生は一目散に去ってしまった。古い駅舎はもぬけの殻で、自動改札機だけが煌々としていた。

駅前広場はなく、クルマがひっきりなしに走っている。志染の方向に向かうと生活に必要なものは何でもありそうな感じ。
遥か下方に整然とした都市が広がっていた。この眺望はちょっとしたサプライズであった。

ポツリと灯りがともった。
広野ゴルフ場前というけれど、ゴルフ道具一式を背負った人は誰ひとり現れなかった。神鉄のワンマン電車でゴルフに行く人はいないのだろうか?

代わりにオバサンの二人連れがやって来た。ハイキング帰りのようだ。
トラブルが発生した。
カードが自動改札機に詰まってしまったらしい。糞詰りなら志染のクリニックがおすすめなのだが。
結局、インターホンで係員と相談されている。

次の電車で係員が駆け付けてきた。
そして、カードを見事に救出させた。まさに「帰ってきたウルトラマン」であった。