鍋島直茂の妻・陽泰院(彦鶴姫)は、佐賀の豪族・石井家の出身であった。
賢夫人として名高い陽泰院であったが、息子の勝茂に対しては一つだけ、
政治への口出しをした事があった。
「私の実家の石井一族の者の処遇ですが…、
決して勘定方のお役目にはつけぬよう、頼みますね。
依怙の沙汰と言われるかも知れませんが、こればかりはお願いします。」
「母上? お役目に付けろと仰るのならともかく、
付けるなとはどういう事なのでしょう?」
「だって、勘定役などをおおせつかって、毎日毎日お金を目の前にしていたら、
つい手が出ちゃう事ってあるじゃないですか?
私、親族が裁かれるのなんて見たくありませんもの。
初めからお金とは無縁の生活をしてれば、欲なんてかかないんです。
だからお願いしますね。」
「は、はぁ…、承知いたしました。」
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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