天正元(1573)年、北条と里見との間で合戦があった。
小田原へ向け里見の水軍が押し寄せているという噂が広まると、
誓願寺の庭林坊は唐傘を差して見物に出かけた。
すると浜には先客がいて、三本唐傘の旗印を差した高山大膳といった侍が、
沖の船に向かって、戦名乗りを上げていた。
庭林もこれを見て、
「拙僧は第二陣、浄土宗誓願寺の法師武者、唐傘の庭林なり!」
と名乗りを上げた。
ところが沖の船はただの釣り船だと判明し、集まった人の間から失笑が漏れた。
「高山某と誓願寺の坊主が、釣り船に勝負を挑んだ。」
この噂は北条氏政の耳に入り、氏政の子の国王丸がその坊主を見たいと御前に召し、
「昨日のごとく、言葉を違えず名乗ってみよ。」
と命じた。
庭林坊は、他ならぬ北条の若君の頼みとあって、
庭へ下りて唐傘をばっと開き名乗って見せた。
国王丸は大笑いし、庭林にたくさんの褒美を下されたという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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