思い切ったことをすれば☆ | げむおた街道をゆく

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前田利常の御徒であった澤田新八は、

ある時、利常の意に違えたため、閉門を仰せ付けられた。
 

そのような中、利常は参勤のため小松より出て金沢の浅野屋に宿泊し、

そこから出立して金沢の町端まで来たところに、金鎖橋のかなたに新八が罷り出て、

田の際に這いつくばっていた。

前田家中の者達はいずれも、

「あれは御折檻人ではないか。どうしてここに?」

と思っている所に、
利常の駕籠も近づき、これに気がついた。

「あれは澤田新八めか?」

「その通りでございます。」

「あやつは閉門をさせておいたのに、どうして罷り出でてきたのか、尋ねてまいれ。」

そこで家臣が新八にこれを尋ねに行くと、
「私は、殿の御在国中には御免して頂けると思い、それを待って閉門していましたが、
お許しはなく昨日参勤のためお駕籠を出立なされました。
そこで、もしかしたら金沢でお許し頂けるかと思いました。

しかし、それも無いのであれば、もはや来年までには頼りも尽きてしまいます。

そのくらいなら死んだ方がましだと思いました。
ですが自害するよりも、御目通に罷り出でて、

誰かに斬り殺されたほうが御憤りも止んで宜しきはずと考え、

こうして罷り出て来たのです。」

新八はこのように語り、これを利常に伝えると、
「1年閉門させても足のいらぬ奴じゃ!

…猿の革の毛巾着を今持っているのか聞いてまいれ。」
そこで尋ねると、

「持っています。ここにあります。」

と、懐中より出して渡した。

利常はこれを御覧になって、

「新八に、それを下げて供をするように言え。」

と命じた。
 

こうして澤田新八は江戸までお供をし、御奉公申し上げた。
思い切ったことをすれば、お許しになることも間々あったのだと、

これはこの参勤の時、
同じくお供をしていた塩江半右衛門がお話になった事である。

 

 

 

戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。 

 

 

 

こちらもよろしく

→ 底の知れぬ人、前田利常

 

 

 

ごきげんよう!