上杉家が、伏見城の普請を担当した時の話だ。
この時期、伏見城普請に関わって課役負担の不十分などで改易された武将も多く、
作業は難航していたと思われる。
そんな中、豪勇で知られた水原親憲(常陸守)は、
普請奉行の直江兼続と口論になった。
キレた直江は水原の頭を思い切りぶんなぐった。
水原は怒ったが、普請奉行と喧嘩して家中を乱してはいけない、
と我慢して帰った。
しかし思い出すとやっぱり怒りがこみ上げる。
「明日直江をぶっ殺して、自分も死ぬ!」
その前に本庄繁長に別れを告げると、本庄に諭されて、
一緒に直江のもとを訪問することに。
迎えに出た直江は水原に言った。
「あなたから訪問させてしまい、私はまたあなたに対して失礼を重ねた。
重任は威がなければ成し遂げられません。
成し遂げられねば、国の利にならない。
あなたは天下に聞こえた豪傑です。
あなたさえ怒りを抑えてくれれば、命令に背く者は出ないでしょう。
あなたに失礼をしたのはそのためです。
幸いにあなたはあの場で私を許しました。
どうか、私の頭を存分に殴って怒りを鎮めてください。」
その言葉に水原も怒りが解け、大いに喜んで宿舎に帰った。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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