関ヶ原の合戦の論功行賞も終わり、家康が諸大名と謁見する事となった。
征夷大将軍就任も噂される天下人との会合である。
諸大名は色めき立ち日程を調整し、続々と駿府に集まってきた。
当日、謁見の間では壮大な場所取り合戦が勃発。
前へ、とにかく前列へ。
家康の覚えが良ければ大封を掴む事も夢ではないならば当然である。
が、誰よりも早く謁見の間に到着しながら最後列の隅に陣取った男が居た。
家康が姿を現し諸大名が口々に祝いの口上を述べる中でも、
その男は一言も発さなかった。
家康が退出するときふと立ち止まって部屋を見渡した。
諸大名が家康に注目した中…。
「真田の声を聞かなんだが…居らぬのか?」
すると最後列から声がする。
家康が見難そうにしているので慌てて数人が身をかわす。
自ら最後列に座り沈黙を守っていた男、
真田伊豆守信之の平伏した姿がそこにあった。
家康はその姿を見るや、
「うむ。健勝のようで何より。」
と声を掛けてから退出した。
信之は平伏したまま動かなかった。
諸大名はこれを見て非常に羨ましがったという。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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