慶次が、米沢の外れの堂森に住んだ時の話。
安田ら数人の友人が慶次に呼ばれて堂森へ来ると、
遠くから石つぶてが飛んできた。
何事かと見ると慶次である。
「諸君をもてなそうと、鳥を捕まえようとしている。
捕まえたら戻るので、諸君は私の草庵に先にあがって休息するといい。」
一同は、「また慶次のいたずらか。」と笑って草庵へ向かった。
ところが、草庵には全くもてなしの準備がされていない。
しばらく待っても慶次は戻らない。
一同は、
「また慶次にだまされた。こんなとこにいても時間の無駄だ。」
と憤慨して、草庵を出た。
城下へ戻る途中、慶次に出くわした。
慶次は平然として、
「待ちくたびれたのか。それは気の毒だ。」
と、へらへらしてる。
「鳥も全然こないし、君たちの不興も買ってしまった。
どうしようか・・とりあえず戻ろう。」
と、一同に草庵へ戻るよう促した。
一同は、ここまで来て何もしないよりはましか―と慶次にしたがった。
慶次は遠回りの道で草庵へ向かった。
すると、行く先で酒宴をしている輩がいる。
見ると、女たちが物見遊山をしていた。
慶次はこれを怒鳴りつけた、
「誰の許可でここで酒宴をしてるんだ!」
その怒鳴り声に、女たちはあわてて逃げだした。
慶次はまた平然として、
「これは草庵で出そうと思っていたのより
上ものだ。ここで飲み食いしよう。」
と言い放った。
安田たちも腹をすかせていたので、すぐさま酒肴に飛びついた。
実はこれはすべて慶次の用意したもの。
普通のもてなしではつまらないからと、趣向を凝らしたのだった。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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