前田慶次郎が、会津上杉家に仕官したての頃。
同輩が、
「林泉寺の和尚の顔ほど憎たらしいものはない。何とか一発殴ってやりたいものだ。」
と雑談しているのを聞き、
「それならばワシが行って、和尚の顔をぶん殴ってきてやろう。」
と言って引き受けた。
さっそく巡礼に仮装した慶次郎は林泉寺に行き、
和尚と雑談してすっかり打ち解けるや、客殿に碁盤があるのを見つけ、
碁の話題を和尚に振ると、
「巡礼どのは碁がお好きなようだ。拙僧と勝負いたしましょう。」
という。
慶次郎はすかさず、
「では、負けた方は「じっぺい」を当てられるという罰」をつけましょう。」
といい、和尚は承諾した。
一番勝負は、慶次郎はわざと負け、
「和尚様、約束のしっぺいをお当て下さい。」
といって、和尚はつめでちょこんとしっぺいを慶次郎に当てた。
二番勝負は慶次郎が勝つも、
「和尚様にしっぺいを当てるなど恐れ多くて無理です。」
としきりに辞退して見せると、
和尚はあの程度のしっぺいなら軽いと思い、
「巡礼殿、遠慮は無用じゃ。」
というので、
「それでは、おそれながら…。」
といって、和尚の目と鼻の間を思いきり引っぱたいた。
和尚は白目をむいて気を失い、鼻血をながしならら倒れたのを見て、
慶次郎は大笑いしながら寺から逃げ去った。
そして、同輩にそのことを話して再度大笑いしましたとさ。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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