前田利益が、高徳公(前田利家)に従って京都にいた時、
関白・秀吉は利益が奇人であると聞いて謁見を望み、
務めて異様を表して出仕するように命じた。
すると利益は髻を耳上に作り、皐比(虎皮)の肩衣を身に付け、
異様な袴を穿いて出仕した。
利益は謁見するに到り、頭をそばだてて拝謁し、髻はまっすぐになった。
秀吉は大笑いして良馬一頭をお与えになり、
「再謁してわしの面前で、この馬を受け取れ。」
と、言った。
これは利益が、更に異様な装いで出仕することを推量しての心中であった。
利益は退くと服を改めて髻を正し、進見して賜物を拝領した。
表情は正しく、容姿も厳粛であり、進退も規律があった。
秀吉は感嘆して、利益が変通を知ることを称えた。
『戦国ちょっといい話・悪い話まとめ』 より。
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