なんで?俺が白血病? | あ~ぁ、白血病になっちゃった

なんで?俺が白血病?

帰宅途中、上司が気を使ってくれて職場近くの居酒屋に誘ってくれた。

私は未だに白血病疑惑に対してピンときていなく相変わらず、他人事だったのだが、もし本当に白血病だったら自分はどうなるのかなと思いだしはじめた。人間いずれは死ぬんだし、それが人よりちょっと早いだけだ。と開き直ってみたりしたけれど、ここでもし、俺が死んだら俺の夢であったマスターズや全英オープンで息子のキャディーバックを担ぐことができなくなるんだなぁ。と思ったら、急に涙が出てきて止まらなくなってきた(:息子はそんなにゴルフが上手なわけではございません(;^_^A)。

私が泣いているのを見て、居酒屋の店員さんに、

「普段明るいあなたが何泣いてるのよ?」と聞かれ、理由を説明すると、おつまみとビールを差入れしてくれた。チェーン店で在庫管理に融通のきかない店なんだろうに…嬉しかった。

帰り際、

「俺が白血病じゃなかったら、1,000円で飲み放題にしてくれる?」

「1,000円じゃきついから、あと600円頂戴ね」そんなやり取りが気持ちを楽にしてくた。が、

やっぱりそれだけでは不安は拭いきることはできなく、駅のホームから九州の仲間に電話をかける。

「実は俺、白血病の疑いがあるんです」

「何言ってるの!あ~びっくりした」

「嘘じゃないんです。本当なんです」

まぁ、普段の私を知っている人はそうなるよなぁ。なかなか信じてもらえなかったんだけど、

「わかった!じゃぁ、免疫力を上げると言われている健康食品AHCC を送るから、飲んでみて」

心遣いが嬉しかった。


妻が病院を探してくれた。その病院は癌の専門病院で癌の疑いがある人か、癌を罹患している人しか受診できない病院で完全予約制だった。木曜日に金曜日の予約をしたところ、予約がいっぱいで予約ができず、月曜日に受診することになった。世の中そんなに多くの癌患者がいたことに驚く。


月曜日までの3日間が長かった。インターネットで白血病について調べ、白血病と戦っている人の闘病記も読んだ。何が原因で白血病が発病するのかわからなかったので、白血病の原因を調べたら、

「慢性骨髄性白血病が発症する原因は十分に究明されていませんが、他の白血病と同様に大量の放射線の被曝によって発症が増加することが、原爆の被爆者の方や放射線治療を受けた方に対する調査によって明らかになっています。」

となっていた。当然、私は原爆の被爆者でもなく、放射線は健康診断の時にしか受けていない。要するに究明されていない人でしかない。それなのに妻やお袋からは、

「普段からの不摂生が原因じゃないの!?」とのキツイ一言。いつ・どんな不摂生を俺がした?年度末や年度当初は決算業務で帰宅が24時頃が続いたけど…。病気に対する原因も調べないで、原因のすべてを不摂生と言うのはやめようと学習した。後日、妻とお袋は私のいないところで泣いていたことがわかった。「病人は俺なんだけどなぁ」と思ったが、「この世の中で俺のためにどのくらいの人が泣いてくれるんだろう」とも思った。贅沢な話だ。お袋は、私の前では泣かなかったが、ため息の連続だった。今までの人生の中であんな連続でため息を聞いたのは初めてだった。心配してくれているのは充分わかったが辛かった。


土曜日は健診前から息子と一緒にゴルフに行くと約束していた。息子は楽しみにしていたのだが、今回の件で行けるかどうかわからなかったので、プレーできるとわかった時、とても喜んだ。前の晩、息子に病気のことを説明した。説明中台所仕事をしているお袋の肩が小刻みに震えていた。ゴルフは、何故か調子よく自己ベストに1打足りずの好成績だった。最終ホールは、しばらくゴルフができないと思い、執念でパーパットをねじ込んだ。プレー中、何度か涙が出そうになったが、息子の前で泣くわけにもいかず苦労した。プレー後は、倦怠感に襲われ不安になる。


妻からは、

「あなた平気そうだけど。どうして平気なの?」

と何度も聞かれた。その度ごとに、

「まだ、病気がはっきりしたわけでもないんだから、取り乱す必要はないだろ」と嘘をついていた。

突然「白血病」と言われて平気な人がいるだろうか?本当は平気ではなかったが、泣いている両親や妻と一緒に今は泣く段階ではないと思い、土俵際で踏ん張ってただけだった。


長い長い3日間だった。