池井戸潤のクライムノベルで最高傑作と評判の高い『七つの会議』
池井戸作品のドラマと映画は全て見ているのですが、
映画化された前作「空飛ぶタイヤ」がイマイチ消化不良だった感がありました。
というのも、多くの登場人物の感情の変化やなかなか一筋縄ではいかない現実をリアルに描くのは、
映画の尺では伝えきることができないからです。
なので、“池井戸作品はドラマの方が向いてるのかな”と一抹の不安を持ちつつ観ることに。
しかしその不安は序盤の10分で解消することに。
監督は福澤克雄はドラマ「半沢直樹」をはじめ、
「下町ロケット」や「陸王」、「ルーズヴェルト・ゲーム」など
あらゆる池井戸作品の演出を手掛けてきた人で、
彼の作品を訴求するには何が大事かを一番理解している方と言えるでしょう。
役者陣はというと、主演こそ野村萬斎という非常にクセの強いキャラをもった役者を添えたものの、
脇を固めるのは、香川照之や及川光博、片岡愛之助に音尾琢真、立川談春、春風亭昇太といったドラマでもお馴染みの顔ぶれ。
このほかにも、木下ほうか、小泉幸太郎、土屋太鳳、北大路欣也といった過去の池井戸作品には欠かせない役者たちが
豪華全員集合。
ドラマでの演技やカメラワークも巧みに取り入れながら、池井戸作品のドラマシリーズに慣れた観客を
グイグイと映画の中に引き込んでくれます。
何かと“……ハラスメント”という話題で大騒ぎになる昨今、
“会社の守るべき信念とは何か”
“働く者の正義とは何か”
をテーマに、見事なまでに映画尺の中に描き切られています。
そしてエンディングテーマにはなんと、
ボブディランのバラードナンバー「メイク・ミー・フィール・マイ・ラブ」を使用するという
何んともニクイ演出が。
これはヒットしないわけはないわなと確信して、映画館を後にしました。