20240703 透析療法はブラックボックス | 阿岸鉄三“わたしの視点・視座・視野”

20240703 透析療法はブラックボックス

20240703 透析療法はブラックボックス

政治資金をめぐる裏金問題にブラックボックスであるという表現が出てきた。いわゆる政治政策費として集めたお金がいくらなのかどのように使われるのかその実態が分からないことに対しての言葉である。この表現を新聞で見て私は透析療法はブラックボックスであるという論文を書いたのを思い出した。私が透析療法に関わったのは1960年代で、装置についても使いかたについてもまったくわけのわからない時代だった。しかし透析を腎不全患者に繰り返して使うと生命延長に効果があるということがわかってきた。それ以前には慢性腎不全になると一年間の生存率が10%であったのが、透析療法を継続することによって90%の生存率を得ることになったのであった。では、透析をすると何が良くなるのか。1970年代から80年代ぐらいにかけていわゆる尿毒症性物質・尿毒素という考えがあってそれを透析療法によって除去するということになった。それには透析膜の目が大きくて大きい分子量のものが通過することがより効果的であるということになって新しい膜の開発が行われた。分子量で言うとおそらく小さなタンパク質くらいまでが抜けた方が良いのだろうということになった。だが結局尿毒素なるものは特定することができなかったという時代であった。要するに透析をすると慢性腎不全の患者は生きることができるが何をやっているのかわからない。つまり何が起こったのかわからない。透析療法はブラックボックスであるということになった。日本は移植が普及しなかった。日本は世界でも有数な透析療法についての先進的な国となったが、しかしそこでは何が起こっているのかわからない。ただ結果だけが残ったのである。

Original description 20240623