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   臨時ニュースをお知らせいたします。

  今国会で核兵器開発法案が可決されました。

 

   国を二分した大論争のはてに防衛兵器省にての核の製造がスタートされま

  した。法案可決の瞬間、大倉ジミー首相は溢れる涙を抑えきれず、深々と頭

   を下げて10年來の来し方を改めて思い描くのであった。

 

  時は8年前に遡ります。民自党のジミー大倉は波多野内閣で防衛大臣に初入閣、

   新進気鋭の若手論客として注目を浴び、世界に影響を及ぼす100人にも選ば

  れた希望の人でもあったのです。日本からは3名が選出、国会議員では彼ひと

   りのみ。

   

   ジミー大倉がその名を上げたのは、国会での演説がはじめであった。波多

  野首相の施政方針演説での一部をジミー大倉が登壇し所信を述べたのです。

   当時波多野吾郎首相の秘蔵っ子と云われ、いずれは波多野派を継ぎ将来の

  宰相の器と言われておりました。風貌も日本人離れで、彼の祖母がA国の自

   動車王の末裔で列記とした西洋人であり、隔世遺伝か昔の映画スターのハ 

  リソン・フォードにそっくりそのまま。T大法学部を首席で卒業、引く手あま

   たの進路から彼が選んだのが防衛産業のH重工業であったのも、将来を見据

  えていたのか。その後ハーバード大学に留学、英仏、中国語も堪能、190㎝の

   体躯で世界の首脳にひけをとらない堂々たるおしだし。 中身は義理人情

  を大事にし、趣味は落語や浪曲を人前で披露すること。

 

  「総理の特別の計らいにより防衛省を代表して、わたくしの所信の一端を述べ

   させていただきます。古来、わが国はかの聖徳太子の、日出ずるところの天  

   子、日没するところの天子に書を致すの例えのような、優越意識を正さなけ

   れば、いけません。神国などの思い上がりは廃していかねばならないのです。

 

   我が先達が今から30年前に団塊の世代が80歳を超え老人大国と海外から揶揄

   され、静かで穏やかな国、台所事情も最悪、国民はやる気も失せ、まさに三

   流国家の浮沈の際に、国家移民法の大改革を断行したのです。まず押し寄せ

   てきたのが、世界中からの大量の難民でした。日本人に帰化するのが条件で

   した。以外だったのが中華人民共和国からの移民でした。余りにも大勢なの

   で日本転覆を意図しているのではないかの憶測も、そこで編み出された法律

   が融和法でした。各種会合における集まりに三分の一を他の人種、江戸時代

   の大目付のような制度。企業にもアフリカやパキスタン等あらゆる国の出身

   を分け隔てなく採用するように法改正されたのはご承知の通りでございます」

  コップの水でやおら口を湿らせるジミー大倉防衛大臣。さらに演説は続く。

 

  「我が国は世界で初めての原爆の被害を被った、唯一の国家であります。幸い

   にしてその後において今まで核兵器は使用されていません。が、この先も核

   が使われないという保証はありません。現に過去、使用寸前まで至ったこと

   はありましたし、核開発を進めている国もございます」

 

  「仮定の話ですが、わが国がポツダム宣言を早期に受諾していたら、核を使用

   した最終戦争がその後起こっていたことでしょう。我が国が実験場にされた

   から悲惨な光景を目の当たりにしたから、世界の核保有国首脳は使用をため

   らうのです」

 

  「我が国には非核三原則を国是とし対外的には核廃絶を主張してきましたが、

   核廃棄の流れは遅々として進まず、虚空に言葉のみの状況です。しまいには

   放射能を出さない、きれいな核兵器の開発を手掛けている始末です」

          

  「戦争が起これば世界が潤う時代はもう来ません。反対に世界の飢餓や疫病な 

   ど負の遺産のほうが勝ります。そして国民のひとり一人に問いたい、あなた   

   はお隣の国や遠い国のために命を懸けて戦えますか、よーく考えてください

   自分の国は自分で守る、条約があるから、同盟関係だから助けてくれると思

   っていませんか、古い話で恐縮ですが過去にU国とR国の戦争のとき武器供与

   のみで決して戦争には加担しませんでした。何故か世界大戦になる恐れが、

   あったからです」

 

  「日本国はすでに単一民族ではありません、1憶6000万人、黒人もいれば褐色

   の肌の人もいるユダヤ人もエスキモーの人もいる人種のるつぼです。皆が

   ニッポン人です。過去の日本人は好戦的な人種と思われていましたが、今や

   宗教も人種差別も超越したのが日本国、否言い換えます、我々こそが地球を

   代表する国家といっても過言ではないでしょう」

 

  「そこで、わたくしからの提言がございます勿論総理にも了解いただいており

   ます」  

  「提言はズバリ、核を持つべきだということです、核保有国を目指すと云う事

   です」  わぁ~ん・・ゴゴーゴゴーゴ

 

 そのときの議場は怒号と悲鳴にも似た一種異様な喧噪に包まれたのです。勿論、

  議事はストップ、衆院議長は与野党理事を集め鳩首協議、取り敢えずは3時間

 の休憩を宣言。前代未聞の施政方針演説でありました。

  当時の新聞報道をみると、社憂党党首の藤本ばれん氏のコメント「与党の数を

  頼みの暴挙、暴挙、暴挙であります。我が党は命を懸けて絶対反対です」社憂

 党は純日本人が6割を占める野党第一党。かねてより国防予算より福祉第一主義。

 

  テレビ報道もヒートアップやれパンドラの開けてはいけない箱を開けたハリソ 

 ン・フォード。日本を破滅に追いやるのか。そもそもあの移民法が間違いだった。

  古き良き時代だった令和の御代。  なんともハチの巣をつついた大騒動。

 

 問題山積みの国会運営、施政方針演説の再開が決まりました。問題はジミー大倉

  防衛大臣を登壇させるか否かでありました。日本一国の騒動は世界中の耳目を

 集め続けざるを得ませんでした。

 

  ジミー大倉防衛大臣の姿がテレビ中継され日本国民も固唾をのんで見入ります。

  

  「過去、話せば解ると言った政治家が問答無用と惨禍に遭われました、話をし

   て分かっていただけたら、どんなに素敵な世界でしょう」

 

  「我が国が核兵器を保有することによってこそ、未来の核廃絶が現実のものに

   なるのです。唯一の被爆国である日本が今まで核廃絶を訴えてきましたが総

   論賛成、各論反対で核廃棄の道筋さえ出来なかったではありませんか、真剣

   に取り組んでいる方たちが多勢いらしゃるのは勿論承知しております。核を

   持つ重責と厳重な管理を踏まえ、核保有国同士会議を提唱、それとともに非

   人道的な兵器開発禁止の条項、新たなる地球連合構想で戦争及び地域紛争の

   解決、わが国の人種融和論の実践を世界に呼びかけ、最終的には国境をなく

   す、太陽系第三惑星には、国境線は描かれていないのです」

 

  彼の(地球に国境線は書かれていない)がワールドニュースで大絶賛の嵐。

                 了。

 

   2024年も1月下旬今年はすでに米大統領の予備選がスタートを切っており

   ます。世界の紛争地帯での終息は見えず、アジアに於いても北朝鮮が韓国

   を第一の主敵と位置付けるなどきな臭くなっております。一部での情勢如

   何では韓国や日本の核武装論なども叫ばれております。

   2022年にブログで3分割したものをまとめたものです。お読みいただけた

   ら幸いでございます。ありがとうございました。