Dr. K  ピークオイル考 -25ページ目

オイルピークは天恵か ?

化石燃料の生産ピークは、二酸化炭素の排出ピークでもある。このことをもってオイルピークは地球温暖化を救う天恵だとする意見がある。しかし、そもそも大気中の二酸化炭素濃度の増大が地球温暖化の原因であるって、ホントだろうか ?


3, 40年前、しきりに石油枯渇説が喧伝されていた。いわく「石油はあと 40年で枯渇する」と。そしてその隅っこに " しかし原子力が輝かしい未来を保証します " といった類の宣伝がさりげなく付き纏っていたことを記憶している。さすがに " 枯渇説 " のウソがこれ以上通用しなくなった頃、次に担ぎ出されてきたのが " 地球温暖化説 " ではないのか。


産業革命以降、化石燃料の燃焼により、大気中の二酸化炭素濃度が上昇してきたことは事実である。しかし、昨今の気候変動は長大な時間にわたる地球の周期的変動の一局面に過ぎないようにもみえる。温室効果を有するガスはいくつもあるが、その最大のものは水蒸気である。それに比較すると二酸化炭素の果たす役割など誤差の範囲程度に小さく、とうてい昨今の気候変動を説明できるものではない、らしい。

ちなみに二酸化炭素濃度の増大は植物の光合成を促し、食糧増産に資する。


不幸なことは、あたかも枯渇説が形をかえて再来してきたもののように、ピークオイル論が受け取られていることだ。同時にピークオイル論は原子力推進の必要を説く材料にさえ、利用される。 しかし、放射性廃棄物には気が遠くなるような時間に渡り厳重な管理が必要である。しかもそのとき、オイルはないのである。原子力は、未来人に対する搾取である。


今年のノーベル平和賞が、温暖化説の急先鋒 ( ゴア氏と ICPP ) に授与されることが決まったという。これで温暖化説は、知の最高権威にお墨付きをもらったような格好だ。これを原子力推進のための欺瞞的な一大政治ショーとみるのは、いささかうがった見方、か ?




( 次は救命ボートについて )


“ オルドバイカーブ “ の軸の傾きについて

オルドバイ仮説中、世界人口ひとりあたりのエネルギー生産量の経時変化を表したカーブを、ここでは便宜上、オルドバイカーブ とします ( http://dieoff.org/page224.htm , Fig.4 )。

オイルの採掘には一定のエネルギー投入が必要なのだが、その投入量ははじめのうちは問題にならないくらい小さかった。それは時とともに大きくなっていく。原油 100バレルの生産に、1バレルの投入で済んでいたものが、30バレルの生産に 5バレルの投入が必要となれば、実入りの激減は実感されるでしょう。オイルも採算性のよいところから手をつけていくのはあたりまえ。ピーク後、埋蔵量はあと半分残されているとはいえ、オイルを採掘するのにオイルがたくさんいるという状態。つまり EPR ( Energy Profit Ratio = エネルギー利益率 ) の劣化である。実際に利用できるオイルの正味の量の経時変化がどうかというと、ハバートカーブの軸を右に傾けたようになる ( http://www007.upp.so-net.ne.jp/tikyuu/oil_depletion/netenergy.html )。



ここで オルドバイカーブ を想い浮かべてみると、同じように右に傾いているようにもみえる。


しかし、“ Cliff = の部分には、そんなことよりももっと恐ろしい意味が隠されているかも知れない。

ピーク前半は需要の増大に応じてエネルギー供給が追随してきてくれた。エネルギー供給の増大は経済の発展でもあったが、パラレルで増えたもののもうひとつに、世界人口がある。楽な変化だった前半から、ピークを境に事態は一変するでしょう。

つまり絶対的に少ないエネルギーの奪い合いを続ける中、多過ぎる人口のまま推移するという世界です。人口が、エネルギー生産に見合った 適正な 水準に減少していくって、具体的にどんな世界なのさ ?

( 次回は「天啓か?」について )

正味の輸出問題

世界の liquids 輸出量 ( 日量 ) は、

2003 4,360万バレル

2004 4,640万バレル

2005 4,700万バレル (  輸出ピーク ! )

2006 4,681万バレル

2007 4,599万バレル ( 1月から7月までの平均 )

( http://www.theoildrum.com/files/oilwatch_monthly_october_2007.pdf.pdf )

データは実に、輸出ピーク が過去のものであることを示している。

正味の輸出問題

オイル輸出国は、生産量が減る中、自国の経済成長に伴う国内需要の増加分があるため、その相乗効果で輸出に回されるオイルは急減していく。この間世界がたどったデータをあてはめたある予測によると、2013年、世界のオイル輸出量はゼロになると ( http://canada.theoildrum.com/node/3091#more )

その間、新たに輸入国に転落する産油国もあれば、部分的に自給していた産油国も輸入依存度をあげていくでしょう。つまりパイが急減する一方、欲しがるところは増えていくという構図だ。

外交に押しの弱い我が日本は、石油争奪戦から真っ先に脱落し、2013年といわず、それより早い時期に 輸入ゼロ のときを迎えるのかも。無産油国である日本にとって、輸入ゼロ はそのまま オイルゼロ を意味する。

そのときどうする ???

( 次回は オルドバイカーブ の軸の傾きについて )

マンションとピークオイル

2006年~2010年、首都圏 ( 13 ) でのマンションの需要は、それに先立つ 5 ( 20002005 ) よりも増えると予測されているようです ( http://www.haseko.co.jp/hc/cri/pdf/040803.pdf )

地価の高い都市部ほど、マンションの高層化が目指されるのは合理的な帰結でしょう。そしてマンションは一般に高層階ほど価格が高く設定される傾向にあります。

しかしマンションの高層化が可能なのは、エレベーターが稼動できるという前提があってのこと。また上水道のポンプが働かなければ、水道もトイレも使えない。

これでは高層階の住民は「難民」となってしまう。

オイルピーク後、日本の電力供給はどうなっていくんでしょう。

電源別発電電力量の構成比は、高い順に、原子力 31%、石炭 25%LNG 24%、石油 11%、水力 8%、地熱他 1% ( 2005年、http://www.fepc-atomic.jp/library/zumen/pdf-data/all01.pdf )

このうち、真っ先に需給が逼迫するのは石油と LNG でしょう。その合計は 35%3割強の原子力も発電所の稼動に石油は欠かせない。原子力といえども、所詮石油文明の一技術に過ぎないのだから。

「ここ数年は大丈夫でしょう」と太鼓判を押してくれる専門家がいます。

えっ? 「数年」?

一時的な停電の散発にはじまり、それがほどなく永続的なものになっていくとしたら‥‥。

はたしてマンションは 買い か‥‥ ?

( 次回は 正味の輸出問題 について )

航空会社

国際線を利用する際、燃油サーチャージ なる料金が、2005年から徴収されるようになった。

航空燃油の中で シンガポールケロシン の価格によって適用額を決めるもので、チケット代とは別口に取られる、いわば燃料の時価料金。1998年にはケロシン1ガロンあたり平均 38.85セントであったものが、例えば3日前の10 16日は 234.29セントでした ( http://tonto.eia.doe.gov/dnav/pet/hist/rjetsin5M.htm )。ちなみに燃油サーチャージに子供料金はない。

航空会社は「1バレル当たり45米ドルを下回った場合は、『燃油特別付加運賃』を廃止する」なんていっていますが、そんな時代が戻ってくるなんて、関係者の中で本気で考えている者などいるわけないでしょう。

国内線では、不採算路線の廃止が打ち出されました。航空会社としては空港などインフラ整備に自治体に莫大な税金を投下してもらった手前、おいそれと撤退するわけにはいかないのでしょうが、ついに背に腹は代えられなくなったとみえる。ジェット機からプロペラ機への変更も、廃止へと続く経過措置に過ぎない。

ドル箱路線といえども、鉄道との価格競争は航空会社にとってはますます不利になる一方でしょう。何百億円もの資金を投入して建設した地方空港などはどうなるんでしょうね。

アメリカでは、デルタだのノースウェストだのも破産申請し、すでに大手 7社のうち4社が会社更生手続きの保護下に入っている。

かつては花形企業のようにもみえた ANA JAL も苦戦しているようです。

航空機で海外旅行するなら、今が最後のチャンスと心得るべき、か‥‥?



( 次はマンションについて考えてみます )