ドイツの哲学者ハイデガー「存在と時間」の紹介。


集団への同調や流される話なので「KY(空気読めない)」とか言っていた日本人には共感できる部分が多い著書だと思う。



  1.ハイデガーってどんな人?




代表的著書「存在と時間」で一世を風靡した。


しかし、後にナチスに加担。

バツ印の人がハイデガー


晩年はボロくそ言われることになる。


  2.「存在」の定義の見直し


ハイデガーは、これまで何気なく使われていた「存在」の意味に疑問を投げかけた。



従来の「存在」=今この瞬間に目の前にモノがある。

と大体の人がそう思うがこれは怪しい。



例として、「りんごがある」「机がある」などの使われ方がある。



しかし、この使い方は

「存在しているもの(りんご、机)」に着目しているのであって、

「存在」そのものではない。



 

ハイデガーは


「存在しているもの」=存在者(ザイエント)

「存在」そのもの=存在(ザイン)


を明確に区別した。



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そして、存在についての理解を深めるためには、物ではなく

人間の存在を分析するのが一番


人間は単なるモノと異なり、過去〜現在〜未来の時間の中で生きているからである。




人間を現存在(ダーザイン)という。

↑頻出ワードなので重要




※ちなみに、現存在が自分について理解したり、存在とはなにかと問いかけることを実存と呼んだ。




  3.「現存在(=人間)」の在り方



現存在は、

自己自身であるか(=本来性)

自己自身でない(=非本来性)

の2つの可能性によって自己を理解している。




実は、ほとんどの人間は非本来性的に生きている。 




誰かから、あるいは、どこかから借りてきた物をあたかも自分自身のあり方であると思い込み、それによって自己を規定している。




それをもたらすのが、世人(ひと)である。

世人とは、世間、空気、みんななど



例えば、「赤信号みんなでわたれば怖くない」

「KY(空気よめない)」でいうと、  

みんな空気が世人に該当する。

 


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全ての現存在が世人に支配されている。芸術、文学、生き方などは自分の価値観で評価されていないことも多い



ハイデガーによると、現存在は知らず知らずのうちに世人に同調しているという。




  4.「世人」の問題点


世人への同調は自分で考えて判断する機会を失う。これが、現存在の非本来性ということ。

ここでは、責任の不在という問題が発生する。



なにか行動しても、

「みんなもこうしている」「世間の常識だから」と自分を弁明する。



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いじめ、ハラスメント、誹謗中傷が起こる原因はまさにこれだ。

本当に相手が憎くてやっている人はごく一部で、あとはなんとなく加担(=世人への同調)しているだけ。


なんとなく加担しているだけで、悪いのはみんな。



自分は悪くないというわけで、どんどん攻撃的になれるわけである。





じゃあ、なぜ世人に同調してしまうのか?



ハイデガーによると


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世人は、充実した人生を送っていると思い込ませるために、現存在のうちに安らぎをもたらす



みんなに従っていれば、順調、充実、間違っていないと自分に言い聞かせることができる。安心できる。




一方で、同調をやめ、自分で人生を切り拓いてくのは不安。




この不安は原因の特定ができない。原因がないため、仮に世人にいくら同調していても絶えず不安と向き合う。




その不安から目を背けるために、ますます同調するという悪循環になっている。




つまり、世人への同調が心の安らぎをもたらすということか

 
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  5.本来性を取り戻すには


どうすれば、世人への同調をやめて本来の自分で在ることができるのか。



死と良心の2つがポイント

であるという。




【死について】


私は、みんな(世人)の一員でもあるから他人の役割や責任を共有したり引き受けることもできる。



ただし、死だけはそれができない。



死と向き合うことで、初めて自分を唯一無二の存在として理解できる。



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明日死ぬってわかってるのに、なんとなくいじめに加担するやつはいないだろう


世人から離れることができる。




死の可能性に向き合うこと(余命などではなく、この瞬間にでも死ぬこともあり得るレベル)を先駆という。



死への先駆が本来性を取り戻すカギとなる






【良心について】


世人「これが唯一の正解なんだ」

というに対して


良心「ちょっとまって!」「本当にそれでいいの?」と別の可能性を示唆してくる?。



世人への同調に対して、そうしないこともできたんじゃないか。違う生き方もあったんじゃないか。



この良心の呼び声に耳を傾けること。敢えて聞こうとする選択を決意性という。







【死と良心の2つを合わせる】


先駆的な決意性になる。



死への思い〜限り有る人生をどうするのか、そのためには、


良心を持とうと決意〜不安から逃れて世人に従うのをやめ、別の正しいと思う道を模索する。 



これこそ、現存在が非本来性から本来性を取り戻す方法である。




ここであらためて本のタイトル「存在と時間」の話と関連するが、



現存在は本来性を取り戻すことで、過去に対して責任を負うことになる。

しかし、これは同時に、これからどうありたいと未来に向けた自己実現に他ならない。



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過去と未来は密接に関連し、相互に浸透し、一つの連動の中で、私達は存在している。




  6. まとめ


・存在とは時間と密接に関連しており、ハイデガーは人間の存在(現存在)について考えた。



・現存在は世人(みんな、空気)に同調してしまう。



・世人への同調は責任の不在が発生するため、いじめや誹謗中傷に繋がる。



・先駆的な決意性が、現存在が非本来性から本来性を取り戻す方法である。

 


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こんないい事言っておいて、よくナチスに加担したな

まさに、世人への同調じゃん

おしまい



 

 


 ↑

ハイデガーの専門家の木田氏も、彼の人間性は嫌いと明言している。笑