本当は、生駒はすぐにでもバトルに行きたいと言っていたのだが、経験者である七瀬と絵梨花はまず基本を押さえる為に丸々2日を費やし、フィールドでの基本的な立ち回りからブキの扱い方までみっちりと教え込んだのだ。
生駒「ううぅ、いざ来てみると…………………緊張するなぁ」
七瀬「大丈夫、最初は皆そんなもんやって」
絵梨花「じゃあ、まずはチームの登録してこよっか」
そして受付に向かうと、前に生駒が訪れた時と同様に新内がカウンターに立っていた。
新内「あら、二人とも今日はどうかした?」
七瀬「はい、今日は新しくチームの登録をしたくて」
絵梨花「私達二人と、生駒ちゃんで登録お願いします」
生駒「ど………………どうも」
新内「あ~、この間の新人くん?
やるわねぇ、もう可愛い女の子を二人も連れて来るなんて」
生駒「なっ……………ち、違います違います!僕はただバトルのチームに入っただけで……………」
新内にからかわれた生駒は、すぐさま顔を真っ赤にしながら否定する。
絵梨花「そうですよ、元々生駒ちゃんを誘ったのは私達なんですから……………」
新内「あら、そうだったの?
じゃあ、二人で生駒くんの取り合いにならないようにしないと………………」
七瀬「もう!だから、違うって言うてるやないですか」
絵梨花「それと、そんな話する為に来たわけじゃないんです!
私達三人でチームを作りたいんです」
新内「そうだったわね、じゃあこれで仮登録して対戦待機中にしておくから、どこかのチームとバトルすれば正式にチームとして認められるはずよ」
手続きを済ませた三人は、ロビーの長椅子で小休憩していた。
生駒「バトルかぁ、僕の最初の相手は誰になるのかなぁ」
七瀬「生駒ちゃん、念の為に言っとくけど、不正だけはアカンで
スポーツマンシップに乗っ取ったフェアプレーを…………………」
「おう!また会ったじゃねぇか、この前のダセェの」
生駒「………………………っ!」
すると突然、ある集団が生駒に声を掛けて来る。
見ると、ノギザカに訪れた初日に生駒に暴言を吐いたチームであった。
七瀬「ちょっと、急に何なん?
なな達のチームメイトに何か用ですか」
「あ?チームメイト?
そうか、オメー仲間に入れてもらえねぇから、女の子に助けてもらってやがんのか、格好ワリー」
「そうそう、どこまでもダサい奴よね」
生駒「ぅ…………………………」
絵梨花「そんな言い方する必要ないじゃない!
言葉を選ぶってことができないの!?」
「お前ら、チームの仮登録中か?言っとくが、俺らはアンタ達とバトルはしねーよ
ダサい初心者倒してレベル上げても意味ねーしな!」
七瀬「あんたら…………………
どこまで生駒ちゃんをバカにして」
両チームの口喧嘩がヒートアップしてくるその時、
ワアァッ!!!
突然、フィールドの出入口付近で人だかりが生まれ、一斉に歓声が上がる。
生駒「な…………………何事?急にこんな…………」
「オイ見ろ、6Sがバトル終わって出て来たぞ!」
七瀬「え、6Sやって!?」
絵梨花「凄い!本物見るの初めてかも!
行くよ生駒ちゃん、こんなチャンス二度とないかも!」
と、5人は一斉に人だかりに集まり、生駒も絵梨花に手を引かれながら向かう。
何十、何百もの人の中心には、他のどの若者よりも圧倒的な存在感を放つ三人の女性がいた。
一人はポニーテールに迷彩柄のキャップを被り、厚手の深緑のジャケットというミリタリー風の服装の大人の雰囲気を漂わせる女性、その反対側には白いライダースジャケットを来て、手にえんじ色のバンダナを持った明るい笑顔を振りまく女性。
そして二人の先頭を歩くのは、横に流した髪と雪のように白い感情を押し殺したハードボイルドな表情が印象的な、笑顔の女性と色違いの黒いライダースを来たチームリーダーと思える女性であった。
三人とも服装や印象は違えど、それぞれがそれぞれの魅力を持ったモデル級の美女が並んでいれば、人だかりができるのも当然と言える。
七瀬「生駒ちゃんは知らんかもしれんけど、あの三人は6Sって言ってな、ただの綺麗な三人じゃなくてバトルがめちゃめちゃ強いチームなんやで」
絵梨花「私、本物見るの初めて………………
今、凄い感動してる」
「そうだ、お前達6Sとバトルしろよ!」
生駒「……………………えっ?」
「リーダーの言う通りだ、今バトル待ちなら6Sと戦ってみな」
「もしあんた達が勝てたら、これからダサいって言うのはやめるよ
これは6Sとバトルをするチャンスでもあるんだよ?」
(なぁ、あいつら…………………)
(あぁ、多分あの初心者が6Sにボコされるの見て面白がる気だ)
突然の相手チームの提案に、周りの者は内緒話を始める。
絵梨花(確かに6Sとバトルするなんて、滅多に出来ることじゃないけど)
七瀬(今のなな達じゃ、とても勝てるわけない……………
でも、生駒ちゃんが悪口言われんのも嫌)
絵梨花(くそっ………………どうしたら、この状況を
生駒「分かりました」
「「………………………え」」
生駒「そのバトル、僕達が受けます!」
「「ええええぇ----------!!!」」
七瀬「生駒ちゃん、自分が今何言うてるか分かってるん!?」
絵梨花「私達が6Sに勝てるわけないでしょ!」
生駒「確かに…………………
僕はこれが初バトルで、相手はすごく強いです
ほぼ確実に負けるかもしれません
それに、19歳になってから今、ノギザカに初めて来た僕はダサいかもしれません
でも、する前から負けることを考えて逃げる方が僕はずっとダサいし、格好悪いと思います!
だから、僕はそのバトルを受けます!」
「……………………………」
七瀬「そうやね、生駒ちゃんの言う通りやな」
絵梨花「私達は弱いかもしれないけど、それは理由にならないもんね!」
生駒「というワケで、6Sの皆さん!
僕らとバトルお願いします!」
「「お願いします!」」
三人は、6Sに向けてお辞儀をする。
「ふっ、気に入った………………
いいだろう、手加減しないぞ」
すると、白い肌をしたリーダーらしき女性が口元に微笑を浮かべ、応答する。
「まいちゃん、そうは言うても相手は新人くんやからあんまりイジメたらあかんよ?」
「大丈夫、まいやんはその辺のマナーはわきまえてるから」
そして6Sの三人も受付でエントリーを済ませ、両チームのバトルが決定した。
「ENTRY SEAT
生駒里奈(レベル1/Eランク)
西野七瀬(レベル10/Dランク)
生田絵梨花(レベル8/Dランク)
vs
白石麻衣(レベル83/SSランク)
松村沙友理(レベル82/SSランク)
衛藤美彩(レベル77/SSランク)」
『さぁー、始まりました!
NCホールにて開催しております進化型サバイバルゲーム、通称「コンバティオン」!
なお、当ホールで行われます試合は、動画サイトにてリアルタイムで生配信しております!』
NCホールの試合会場では、男性アナウンサーがハイテンションの実況を務めており、観客もそれに負けない程の熱気を放つ。
『では、コンバティオンの簡単なルール説明をさせていただきます!
コンバティオンは、3対3のチーム戦!
各プレイヤーは、独自開発されたエネルギー機関を搭載したブキを使用し、相手チームのプレイヤーを攻撃します。相手のブキのエネルギーを一定量浴びたプレイヤーはダウンとなり、20秒後にスタート地点に戻らなくてはなりません
5分間の試合時間が終わった時点で、チーム全員の「相手をダウンさせた数」から「ダウンさせられた数」を引いた数が多い方のチームが勝利となります!』
他にも、一度に多量のエネルギーを消費するが高い効果を発揮する「サポートウェポン」と、ある条件を満たすことで使用できる「ヒッサツウェポン」があるが、一般的にはブキで攻撃するのが基本である。
『それでは、今回の対戦カードを発表いたします!
まずはご存知、コンバティオンのトップチーム6Sの、白石麻衣選手、松村沙友理選手、衛藤美彩選手!』
ワァァァ------ッ!!!!
「まいやーん、頑張ってー!」
「みさみさ、可愛いよー!」
6Sの三人が入場すると、観客は一斉に歓声を上げる。中には、フェンスに身を乗り出したり名前入りのタオルを振り回す者もいる。
『続いて、この6Sに挑戦するチームは………
生駒里奈選手、西野七瀬選手、そして生田絵梨花選手の三人です!』
パチパチパチ………………
一方、生駒達が入場すると、先程とは打って変わってまばらな拍手が起こる。
絵梨花「まぁ、この反応の差はなんとなく予想してたけど………………」
七瀬「相手が凄すぎるのもあるよな」
『さらに情報によりますと、どうやら生駒選手は今回が初バトルとのことです!
果たして、6S相手にどこまで食い下がれるか!?』
生駒「って、それじゃ負けるのが前提みたいな言い方じゃん……………そりゃ、負けるかもだけど」
七瀬「生駒ちゃん、このバトルを受けたのは生駒ちゃんなんやで?
だったら、もっと自信を持たなきゃ」
生駒「…………………うん、そうだね
二人とも、最後まで諦めずに頑張ろう!」
「「うん!」」
生駒は、2日前の練習からずっと肌身離さず持っていた自分の武器・ビギニングガンを握り締め、正面に向き直る。
『今回のフィールドは、味方側と相手側にそれぞれ3枚、そして中央に1枚の、合計9枚の小さな壁が8の字を描くように設置されています。
この壁をいかに利用するかが、勝利のカギとなりそうです
それでは、参りましょう!
コンバティオン、レディー……………………
ゴーッ!!!!』