Combation 第2話「チーム」 | 瀧太郎の酒場 "水竜"亭

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生駒「はぁ、ダメだ
誰も相手にしてくれないよ………………」

バトルの相手を探して既に3時間が経ち、空は夕陽が傾き始めていたが、ことごとく玉砕され続けていた。


というのも、生駒を相手にしない者が皆口にする理由が
「ダサい奴とバトルしたくない」
だという。

確かに生駒はできる限りのオシャレをして来たつもりであったが、今の服装はTシャツに半ズボン、白のスニーカーとかなりシンプルなもので、世間的に見ればまだまだダサい部類に入るものであり、周りの人達は皆地元では見たことのないほど派手な服や個性的な着こなしをしている。


しかし、ここで諦められる生駒ではなかった。
再び立ち上がり、声を掛ける。
生駒「あのっ、よかったら僕とバトル…………」

「あぁ!?だからダサいヤローはお断りつつっただろ!!」

生駒 ビクッ「ひ……………」

「そうだそうだ、それに今ウチのチーム負けまくっててリーダーは機嫌悪ィんだよ!」

「そういやテメー、さっきも来てたよな!
ひょっとして、知っててわざとおちょくりに来てんのか!?」

「ほー、そりゃいい度胸じゃねぇか
それじゃあ、今の俺らを怒らすとどうなるかしっかり叩き込んでやる」







「フン、ダサいヤツにはそれくらいが似合ってるよ」

「行きましょーぜ、リーダー
こんなヤツの近くにいてもしゃーないし」

カツカツカツカツ………………


相手のチームが去って行くのを見ると、
生駒「うっ…………………ふ…………ぐっ」
生駒はその場にしゃがみ込んで泣き出す。ところどころに傷をつくり、着ていたTシャツはあちこち破けてもはやただのボロ切れとなっていた。
生駒(こんな目に逢う為に秋田から来たわけじゃないのに……………………


こんなことなら、ノギザカになんて来るんじゃなかった)

既に生駒の心には光はなく、絶望で支配されていた。そんな時、


コツッ、コツッ、コツッ……………

誰かがこちらに歩いて来る足音が聞こえる。それも、一人ではない。
その足音は、急にペースが早くなり、徐々に近付いて来る。
まさか、またさっきのチームが?生駒はそう思っていたが、




「どうしたの!?そんな格好して!大丈夫?」


生駒「………え……………………」

ほぼ放心状態の生駒に話しかけて来たのは、ボブカットにした黒髪と大きな目が印象的な美少女であった。
「よっぽどひどい事されたんかな…………
とりあえず、ななの部屋に連れてくな」
その後に続けて、もう片方の肩の辺りまで伸びた茶色がかった髪と独特のイントネーションの話し方が特徴的なやはり美少女も声をかけて来る。
「うん、私も付いてくよ
大丈夫、歩ける?」

生駒「ぅ……………………は、い」








そして、生駒は二人に連れられてホテルの一室で休んでいた。
「どう、少し落ち着いた?」

生駒「………………はい、ありがとうございます
それにしても、部屋に三人も泊めていいんですか?お金とか色々…………」

「大丈夫だよ、このホテルはコンバティオンする人なら誰でも無料で使えるの」

生駒「そ、そうなんだ…………………
実家の僕の部屋より広いのに」

「それより、あんな格好で何があったの?」

生駒「はい、それが………………………」
生駒は少しずつ、先程の出来事を話し始めた。



「そっか………………怖い思いしたんやな」

「うん………最初は皆そんな感じだったのに、バカにし過ぎなんだよね」

「そうそう、初心者にありがちよな
そもそも見た目だけで弱いって判断する方がななはダサいと思うわ」




生駒「…………………………っ、」
二人が話している途中で、生駒は再び涙を流し出す。
「ど、どうしたの!?何か私達ひどいこと言ってた?」

生駒「………………いえ、初対面の人にここまで優しくされたの初めてなので……………嬉しくて、つい」

「…………………うん、うん
ななが大阪から来たばっかの時もそんな感じやったから、その気持ちはめっちゃ分かる」

「そういえば、まだ名前言ってなかったよね
私は生田絵梨花っていうの、よろしく」

「そうやったね
西野七瀬です、よろしくな」

生駒「ぼ、僕は……生駒里奈っていいます」
お互いの名前を教え合うと、三人の間にあった妙な緊張感がほぐれて、どこか空気も軽くなった。
絵梨花「そうだ、生駒くん…………でいい?
コンバティオンのプレイヤー登録してるなら、ステータスの交換しない?
これから先、何度かバトルするかもしれないし」

生駒「そう、ですね……………
あと、地元だとずっと生駒ちゃん、生駒ちゃんって「ちゃん」付けだったのでそれでいいです」

七瀬「そうやね、確かにその方が呼びやすいかも
あと、なな達のことも敬語じゃなくタメでええよ。2歳離れてるけど、前からなぁちゃん、生ちゃんって呼び合ってるし」


それから、生駒は絵梨花と七瀬に教えられながらプレイヤー情報を共有した。



絵梨花「え、生駒ちゃん19歳なの!?
じゃあ私の方が年下だね、私18歳だから」

生駒「え………………ってことは、1日にどんだけバトルしてるの!?」

絵梨花「あ………………ううん、私は子供の頃から近くに住んでたから、16歳にはもうノギザカに通ってたかなぁ」

生駒「……………………何だろう、バトルしてないのに敗北感が」

絵梨花「なんか…………ゴメンね」


生駒「そういえば、さっき二人は何してたの?」

七瀬「あぁ………実はな、チームのメンバーが一人抜けてまってな」

絵梨花「バトルは基本的に三人一組でするから、あと一人どうしようかって話してたの」

生駒「そ……………それなら、僕が入るってのはどう?」





「「……………………えっ?」」

生駒「そりゃ、確かに僕は今日ノギザカに来たばっかりだし、ダサいかもしれないけど………
でも、二人のチームに入れるなら本望だよ」

「「…………………………」」



二人はしばしの沈黙の後、
七瀬「もぅ、先に言われてまったな」

絵梨花「私も誘おうとしてたのにー…………」

生駒「えっ………………な、なんかゴメン」

七瀬「別にええよ、それより三人とも意見が一致したなら、一応はチーム成立やな」

生駒「うん……………………え、「一応は」って?」

絵梨花「新しくチームを作るなら、一回は一緒にバトルをしないとチームとして登録できないの」

七瀬「じゃあ、今度のバトルがなな達の新しいチームと生駒ちゃんの初バトルやな」

生駒「バトルかぁ………………………
あー、早くバトルしたいなぁ」

七瀬「そういえば、生駒ちゃん……………
バトルの服はどうすんの?」

生駒「え、別に動きやすければ適当に着替えとか……………」

七瀬「それじゃ多分あかんよ、今なな達が着てる服とか靴はそこのショップで買ったんやけど、バトル中に色々ないい効果が付いて来る専用のものやねんで」

絵梨花「そうそう、この服は見た目だけじゃないんだよ
それじゃあ、とりあえず私の着なくなった服あげるよ!売ってる服はほとんどが男女兼用だから、多分大丈夫」

と言って、絵梨花は鞄の中からTシャツを取り出し、生駒に渡す。それを受け取った生駒は、早速着てみた。
生駒「どう、かな?」

七瀬「うんうん、似合ってる
靴とか帽子はまだしも、せめて服はちゃんとしたのじゃないとな」

生駒「二人とも、本当にありがとう………………
僕、足手まといにならないように頑張るからね!」



こうして生まれた新しいチームに待ち受ける試練の数々を、三人はまだ知る由もなかった。